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2018年8月 5日 (日)

今日の躓き石 堂々めぐりのアルミ資源 NHKサイエンスZEROの暴言

                     2018/08/05
 本日の題材は、NHKEテレ『サイエンスZERO 「カガクの”カ” #6 超臨界地熱発電・内視鏡AI」』のとんでもない報道である。
 いや、ここでやり玉に挙げているのは、この番組のタイトルの二件の話題ではない。
 問題としたいのは、二件の途中に挟まれた「東北に眠る新たな資源とは」と題した小ネタである。
 
 番組によると、地質学の専門家という研究者が提案しているのは、火山・温泉地帯に豊富に流れている強酸性の谷水をアルミ缶に作用させて、水素ガスを発生させる試みであるが、既に、秋田県仙北市が賛同しているそうである。
 NHKの番組でそう聞くと、公共放送が、大変良い考えだと紹介していることになるが、少し考えるだけで、この提言は暴言とわかると思う。なぜ、誰も、このような浅はかな研究者の考え違いを直してあげないのか、不審である。
 この研究者は、専門外の分野については、中高生なみの常識も持たず、誰もアドバイスしないから、ひたすら暴走すると言うことであれば、以下の話題の信頼度も推して知るべしとなる。
 
 常識であるが、アルミ缶などのアルミ材は、銅や鉄に比べると、遙かに低温で溶かすだけで、新しいアルミ材として利用できる「リサイクル優等生」である。できたアルミ材は、軽量で、曲げ伸ばし自在であるから、大変好評である。
 だから、分別回収しているのである。だから、売り物になるのである。
 
 このような貴重な資源を、酸で溶かしてしまうのは、資源の無駄遣いになる。
 
 再利用せずに水素ガスを発生させた後のアルミ廃材は、もう金属アルミではないから再利用に使えない。再利用できない廃材として捨ててしまうのだろうか。

 
 ほんの少し考えればわかるのだが、金属アルミは、自然界に存在するものではなくて、アルミ鉱石を精錬して得られるのである。手短に言うと、大量の電力エネルギーを使って、金属アルミに結びついていた酸素などを取り除いているのである。
 そうして得れた貴重なアルミを酸で溶かし、アルミ鉱石に近い状態に戻すのは、大量の弾力エネルギーを捨ててしまうことになる。採算が合わないのである。そのあと、廃材を電解還元して、アルミ地金を得るのだろうか。
 アルミサイクルによる永久運動機関を提案しているのだろうか。
 
 つまり、この試みは、温暖化効果を大幅に悪化させるのである。中高生でもわかる、簡単な理屈を見過ごしているのが、何とも、羽三句算定案なのである。

 というものの、詳しい計算は、当方の手に余るが。以上の考え方を専門家に問い合わせていただければ、直ぐに確認できると思う。
 
 公共放送が、サイエンスと銘打った看板番組で、間違った先入観に動かされて、見せかけの効果に飛びついてしまい、ちゃんとした、つまり、科学的で合理的な考え方で裏付けを取らないのは、嘆かわしいものである。
 
以上

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