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2018年8月 6日 (月)

今日の躓き石 一流棋士に不名誉な「レジェンド」~毎日新聞将棋記事の黒い影

                                  2018/08/06
 本日の題材は、毎日新聞大阪朝刊第13版「囲碁・将棋」面の「囲碁将棋スペシャル」コラムである。つまり、ある程度、囲碁将棋界に通じた読者を対象にした記事である。
 書いたのは専門の記者であろうが、全国紙の記者の基本の基本として忘れて欲しくないのは、生煮えのカタカナ言葉を振り回さないことである。面白おかしく書けば読んでもらえるスポーツ面ではないのである。
 
 世間で時に見かける「レジェンド」は、日本語への言い換えが不安定で、都度、意味が揺らいでいるから、読者に意図が伝わらないのである。と言うか、読者それぞれで理解が違うから、記事の読み方が一定しないのである。報道者として、記事が明確に読者に伝わることを最上の使命として欲しいものである。
 
 今回の記事は、そのようなカタカナ語を自己流に解して見出しにかざしているから、何のつもりかと迷うのである。まさか、叩く記事ではないだろうが、あちこちに名棋士を貶める言い回しが潜んでいるようである。
 
 まず第一に言わなくてはならないのは、十七世名人の資格を持つ名棋士は、別に引退を表明したわけでもなければ、棋力を失って頽勢にあるわけでもない。いわば、現役バリバリであり、順位戦B級一組在籍ということはA級に復帰する勢いとみていいのではないか。その現役棋士を「レジェンド」などと不似合いなカタカナ言葉で呼び捨てて骨董品扱いするのは、大変不都合ではないか。
 
 記事は、序盤部分で、ここ五年間の不振を書き立てているが、その間、関西在住でありながら前会長の遺託を受けて将棋連盟会長の激務を引き受けたことを忘れてはならない。成績不振の言い訳にはしていないが、トップ棋士に不可欠な研究の時間を「大幅に」割かれていたことは容易に想像できる。

 以下、記者は、軽々しく「光速の寄せ」を書き立てるが、要は、将棋の中盤戦のもみ合いと見える部分で、いち早く終盤戦へのとば口を見つけて、相手より早く終局への道筋を見出すことから、先覚者としての偉業を頌えた尊称であって、漠然と寄せが「速い」と言うのではないはずである。本来、寄せ手順開拓への読みの切り替えが、格段に「早い」ことが頌えられたのである。
 
 そのような着眼点は、他の棋士にも伝わり、もはや、不意を突かれて勝負を落とす棋士は少なくなったが、今も玄人筋に「光速の寄せ」と喧伝されるのは、現在も、現役トップの終盤感覚を保持していることが認められているのであって、「名誉」称号ではないのである。先覚者は、技法を模倣されて追いつかれるのが宿命だが、それでも、技法の使いこなしに優劣はあるのである。
 
 それにしても、記者の表現力は、幼稚なものがあって、終盤の寄せの部分で、疑問手を連発するのはどういうことか。
 記者は、「指し回しは年齢による衰えを感じさせない」と高みから見下ろしているが、記者の感性がどのようなものかわからないから、同感も何もない。
 
 棋譜解説から見る限り、長期戦から来る思考力の消耗は、相手方より随分少なかったようである。記者は、何らかのデータを見て、加齢劣化で悪手が増えるのが当然とみているのだろうか。と言うものの、劣化の開始位置と劣化速度は人それぞれだから、そのように勿体ぶって書かれても現時点の当人の思考力は、他と比較してどうかとはわからないと言うしかない。賢そうに言っているものの、実は、字数稼ぎの無駄口でしかない。現時点の名棋士の戦力評価を、専門記者らしい知識と見識をふるって、卓見ですべきであろう。
 記者に順位戦はないから、成績不振もなければ陥落、引退もないと、安穏としていられてはたまらない。


 素人考えだが、生理的な加齢は、早指対局で顕著に現れるのではないかと見ている。一つには、社会的な加齢の影響で諸々の俗事にまつわる思いが思考の中を漂っていて、読み筋の素早い展開を遮るような気がするのである。プロ棋士が、実戦を長年遠ざかった素人指手の俗人と同様かどうかは知らないが、そんな風に見ているのである。
 
 そのように見ると、順位戦のように、思考を練り上げられる棋戦では、読み筋を辿る足取りが多少遅くなっても、正解にたどり着けるように思うのである。
 
 先に書いたように「光速の寄せ」は、着眼と掘り下げの鋭さを研ぎ澄ました思考技法だから、合理的で摩滅せず、体力的な思考力の消耗による影響は少ないのだろうが、それがどうしたというのか。棋士の資質を、分析的に的確に表現してもらいたいものである。
 
 それにしても、記者は、名棋士を一律に「たそがれている」とみているのだろうか。専門記者にしては、浅い見方のように思う。
 
 くれぐれも言うが、現役バリバリの棋士を、年齢や成績不振なる素人目にも明らかな数値データを楯にとって、「過去の人」、「レジェンド」と呼ぶのは、専門記者として、不勉強、怠慢と思う。それを言うなら、永世七冠の偉業すら、過去の残光になってしまう。
 他にも、棋士の力を測り、表現する「パラメーター」(要素)が無数にあって、それぞれ独特の重みがあって、しかも、互いに作用しあっているはずである。それが現実というものである。それを、安直に二要素だけで言い切ってしまうのは、重ねて安直である。
 
 記者は、俗に流されて書き飛ばすのでなく、どう寄せに入るか、よくよく考えて、記事を書き始めて貰いたいものである。それが、読者が専門記者に期待しているものである。
 いや、ついつい、尊大なスポーツ記者に対する不満まで持ち込んで、大層な論説になってしまったが、一読者の勝手な意見であるから、「ほっちっち」で結構である。別に、当方は、記者の上司でもないし、毎日新聞社社長でもない。
 
以上

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