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2018年10月29日 (月)

私の本棚番外 また毎日新聞の虚報か 淀川沿いに古墳時代集落跡

                          2018/10/29 10/30補筆

 毎日新聞2018年10月25日大阪朝刊社会面に「大阪・上牧遺跡 淀川沿いに集落跡 3~6世紀、交通要所に30棟」との記事があり、小振りの記事だが、関西ローカル扱いを良いことにしているのかどうか、まことに大胆な見解がばらまかれていて呆れるのである。

*砂上の楼閣
 同遺跡は、発表者が淀川の中州だったと推定している場所で、三世紀にわたって存在していたと推定するのは、速断であり、ここに見える二つの推定は両立しないと見るのが、合理的な思考ではないか。
 あるいは、中州というのが、学術的に正しいとしても、一般人の誤解を誘うことを期待したか、一種の誇張であり、淀川の分流の間に、比較的隆起して乾いた土地がたっぷりあったという事ではないか。常識的には、中州は軟弱で建物を建てるのに適していないし、橋のない中之島では、大変不便だと感じてしまうのである。
 素人考えだが、学術的に中州というものの、普段は、何れかの支流はほとんど涸れていて、飛び石伝いかも知れないが、比較的自由に往き来ができたのではないか。そうでなければ、建材を持ち込んで建物を建てることすら覚束ず、そんな剣呑なところに、大勢住まうことはないはずである。以上は、あくまで、素人考えである。

*淀川氾濫の幻
 ちなみに、淀川がしばしば氾濫していたというのは、後世人の安直な推定であって、巨椋池の緩衝により、大氾濫はほとんど無かったのではないか。今日の大阪平野の大半は、江戸時代の川筋付け替え以前、氾濫の絶えなかった大和川水系の齎した堆積であって、淀川水系は土地造りにほとんど貢献していないことを見るべきではないか。 
 素人考えだが、当時の人々が、財産と人命を集める建物を、水没の危険がある場所に建てるはずがないと見るものではないか。

*不当な時代比定
 ついでながら、発表者の責任ではないが、三世紀前半が古墳時代であったというのは確たる権威がない推定であり一部論者が醸し点てている風評ではないかと愚考する。
 
 素人考えだが、関西で考古学活動している限り、太った虎の尾は踏めないのかも知れないが、考古学では、出土物に紀年がされていない限り、西暦に固定した判断は控えるという良き伝統があったと思うのだが、どうなっているのだろうか。痩せて遺跡焼けした考古学者はいなくなったのだろうか。

*不出来な報道
 と言うことで、公費で行った発掘事業の成果として、このような不確かな意見を、地方遺跡に対する推定として発表しているのは、ことの締めとしてまことに不適切と思われる。

 藪から棒にコメントを求められた教授が、(三世紀にわたって)「安定した居住実態があったとは」(とても信じられない)と率直に述べているのは見落としてはならないと思う。

 ちなみに、発掘調査の主体とされている大阪府文化財センターは、まだ上牧遺跡現地説明会資料を公開していないで、さしあたり毎日新聞記事に頼るしかないのである。

*不法占有に絶対反対
 なお、同センターは、「ホームページ内の文章・画像等の著作権は、すべて公益財団法人 大阪府文化財センターに帰属します。それらのすべて、または、その一部を、当センターに無断で引用・転載・複製することはできません。悪しからずご了承ください。」と宣言している。

 「できません」は、技術的な可能・不可能ではなく、禁止宣言と読まざるを得ないが、公益財団法人が、いたずらに保有情報を専有化するのは、公益法人としての使命に反する不法かつ反社会的宣言であって、一府民、国民として到底了承できないことをここに宣言する。ことは営利企業が商業出版などしているものではないのである。どうしても、特定資料を引用禁止としたければ、そのような資料は、同意確認して初めて閲覧できるようにすべきであると愚考する。

 早い話が、ここにネット上に掲載された同センターの宣言を引用したのは、引用禁止に対する不了承宣言であるから、どのような法的手段でこれを糾弾するか、是非拝見したいものである。

 法的に見て、インターネットのサイトで、特に制約無しに閲覧できる、万人に公開された情報を適法に引用する権利は、保証されているものと愚考する。是非、ご一考頂きたい。

*教育庁事業

 後に見つけたのだが、教育庁が当発掘の監督省庁であって、サイトに発表資料を公開しているのを見つけた。当記事の批判対象ではないので、その公開内容について、特に言及しないが、同資料が、同センターのサイトに公開されたときも、「すべて」同センターの著作物とする宣言が適用されるのであろうか。教育庁のご意見を伺いたいものである。

*報道の王道
 それはさておき、毎日新聞ほどの報道機関が、素人目にも不備の見て取れる資料を、浅薄、無批判に要約した記事を書いて誌面を汚し、フェイクニュースに近い報道として国民に知らせる役を担っているのは、もったいない話である。

 いや、この記事だけ見ていたら気づかないかも知れないが、纏向遺跡の桃の種騒動では、毎日新聞は、指導者が強引に「気合いを入れて」と檄を飛ばし、鞭打たれつつ、なんとでもして年代鑑定をずり上げようとする現地機関の一途な姿に同情してか、論調が大いに偏っていたからである。
 ここでも、桃の種が出土しているのが報じられているから、次は、大金の公費を投じて、桃の種の鑑定をするのだろうか。毎日新聞は、国の根幹を支える公器であるから、是非、そのような企てを助長するような虚報は、慎んでもらいたいのである。

 参考までに、かねての僚友朝日新聞は、淡々と発表会開催告知の記事だけを載せている。不偏不党の態度であり、報道機関の態度は、そうあるべきではないかと愚考する

以上

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