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2018年11月27日 (火)

倭人伝随想 4 倭人伝の来た道 写本継承の話 2/2

                     2018/11/27

*概念図の試み
 三国志写本継承の概念図を試作しました。エクセルの表計算シートですが、再現できないので図としています。写本時代のとある時点の写本管理のあり方を勝手に図式化したもので、この通りであったと主張するものではありません。帝室原本に始まり、流布写本に至る階層を想定したものです。

 これは個人の見方を示したものであり、正しいとか間違っているとか言う議論の対象外ですが読者としての感想はそれぞれ持って頂いて結構です。

*写本継承の流れ

*絵解きの絵解き
 所詮絵解きでしかないので、簡単に説明すると、100とか36と書かれているのは、史料としての相対評価で、100だから絶対間違いないと言う意味ではありません。%で書かれているのは、写本の相対評価で、誤字、誤写の発生率を見たものではありません。すぐ右、ないしは、すぐ上の写本をその段階で写本した結果として写本の評価が下がるという趣旨です。

 帝室原本は、当代唯一の写本であり、これを100点(満点)と評価します。時代原本は、帝室原本複製品、レプリカであり、時点最善写本として、時代最高の文献家と写本工が行い、僅かな評価点減しかないとみられます。

 以下、順次進みます。一次写本は、その時代で資料参照されるときの「原器」です。二次写本は、王族高官等に配布し、一部、貸し出しに備える控えも作ったでしょうが、もはや最高峰ではないのです。以下は、写本を増やして世に広めるもので、貸出先の写本が大半で、進めば進むほど精度が下がるため累積的に評価が下がります。途中、手持ち写本を種本として写本をやり直すと、一段評価が下がると見て少し評価が下がっています。

 図内下位写本が疲弊すれば、上位写本から補填することになるでしょう。

 反面、下位から上位を上書きすることはなく、不可逆的継承なので、世紀を経ても高級写本に改竄の手が伸びることはないのです。特に、最上位帝室原本は、書庫に厳重に保管され内容が変わることはありません。

 以上の制度は、国宝級の史料写本の変質を防ぐために、当然設定されるべきものであり、この通りに実行されたという証拠は無いでしょうが、他に適切な手段がないので、そうしたものと思われます。

*史料擁護の弁
 今日確認できる三国志史料は、誤字、誤写と思われる点が、大変少ないので、全体として適切な管理が行われたと見るべきです。

                            この項完

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