倭人伝随想 9 晋書地理志に周朝短里を探る 1/9 改
2018/10/26 2018/12/26 修正 2020/11/08
*始めに
本項の目的は、引き続き、倭人伝里制の妥当性を確認するものです。
まず、当ブログ著者は、本記事初出の段階では、倭人伝里数は短里のものであり、これは、現地で実施されていた里制の忠実な反映と見ました。主たる論拠は、倭人伝冒頭で、帯方郡から狗邪韓国までの、帯方郡にとって既知の里程が、七千餘里と宣言されているということです。そのため、全体に「地域短里」、「倭人伝短里」の見方で進めています。
*「誇張」・「虚偽」説
これに対して、倭人伝里数が、悉く「誇張」・「虚偽」と見る説は、総じて根拠のない憶測であり、正史に明記された記事を否定する力を持たないものです。そのような説自体、非科学的な「誇張」・「虚偽」と見えます。例外的に趣旨明解な松本清張氏の主張の批判は別記事です。
*方針説明
当記事は、倭人伝の時代を含む歴史的な地理情報を網羅した晋書地理志の内容を検討し、里制に関する判断資料とするものです。もっとも、晋書地理志に倭人領域に関する記事が無いので、倭人領域で短里が実施されていたことを証する記事はありません。
*晋書紹介
晋書は、倭人伝の編纂された時代の中国王朝です。時に、「西晋」と呼ばれますが、当時は、自分たちの時代が早々に幕引きになって、南方で再建され「東晋」と呼ばれる後世の王朝と区別するために「西晋」と呼ばれるなどとは思っていなかったことは言うまでもありません。
*古代の晋(春秋)
ちなみに、「晋」は、中国古代の春秋時代に、中原北方に封建された春秋時代の一大国でしたが、春秋時代末期に王権が衰えて自由心に権力を奪われて飾り物になった後、重臣間の抗争を歴て生き残った三家が、遂に晋王を放逐、それぞれの姓によった趙、魏、韓の三国に分割したのです。
晋王が、臣下に放逐されたのは、画期的な大事件であり、諸国を束ねた東周の権威が失われ、各国がむき出しの抗争を行う戦国時代に移ったとされます。晋王は周の創業以来の大黒柱であり、臣下による追放から保護できなかった上に、三国から大枚の贈答を受けて不法事態を承認したから、周王に権威がない事を天下に知らせたことになるのです。
*司馬晋登場
ともあれ、この時代の晋の創業者司馬氏は、つい先年の曹操、曹丕の手口そのままに、皇帝から権威を奪うについては、先ずはとなり、古代の晋の旧地を所領とする異姓の「晋王」に任命され、続いて、皇帝から国の譲りを受けるという「禅譲」により魏朝を廃し皇帝としてり晋朝を拓いたのです。こでは、古代とは逆に「魏」から「晋」に権力が移行したことになります。
未完
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