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2018年12月26日 (水)

倭人伝随想 11 局地里制論について 1/3

                            2018/12/22
*局地里制論とは
 既出記事と重複しますが、視点が違うので、再度言うことにします。

 倭人伝の里数の特徴として、冒頭近くで、帯方郡から狗邪韓国の里数を七千餘里とする局地里制を採用したことを明示し、魚豢「魏略」も陳寿「魏志」も、この「局地里制」を採用しています。これは、ほぼ一里七十五㍍程度で、中国の標準である「普通里」、一里四百五十㍍程度の六分の一として、古代史分野では、大抵の場合「短里」と呼ばれています。以下、概数であることは自明なので、「程度」や「餘」は省略します。

 そのような地域独特の短里が採用された理由は、とりあえず不明ですが、ともあれ、短里は、当時の現地の公的な里制として「通用」していたと考えられます。そして、見る限り、倭人伝の残る部分は、一貫して短里で書かれていて、そのまま史書として妥当とされているのですから、倭人伝の里数は首尾一貫していて誇張はないと思うものです。

*根拠無き誇張論

 里数が単に誇張されたのでなく、局地里制として短里が実施されていたと感じるのは、中原の里制と簡単な比例関係に無いからです。
 
 簡単な比例関係は、二倍、四倍、八倍の倍々系列を除けば、ただ一つ十倍関係です。十倍であれば、単に、百里単位の里数を千里単位へ桁変更だけであり、数の計算が一切要らないのです。従って、誇張しやすいように、一里四十五㍍にしそうなものですが、そうはなっていないのです。

 当時は、今日と異なって多桁計算がなく、一長里四百五十㍍で測定した里数を短里七十五㍍に換算するには、里数を六倍するのですが、それでもかけ算に手間がかかるし、計算前後両方で切りの良い数字は、ごくごく限られるのです。

 データの件数は少ないと言え、そのような手間のかかる変換をしたとは思えないのです。まして、晋書地理志を見る限り、短里は、一切公認されていなかったのですから、換算法も知られてなかったのです。

*概数の起源
 いや、ここまできっちりした数字で書きましたが、当時の普通里、短里は、メートルで刻んでなかったので、どちらも端数がぞろぞろ出るのです。ここでは、話が早いように、四百五十対七十五としているだけです。

 大事なのは、一普通里が六短里という比例関係ですが、これは、秦が、全国統一制度を敷いたときに、既存の周里、短里を、新たな里制である長里としたときの倍率と見ているのであり、当然、六倍という整数倍なのです。

*原里数の推定

 倭人伝の七千里、一千里、二百里といった里数表示が普通里の測定値から六倍に誇張されたと見て、元の普通里里数を逆算すると、きっちりした里数が出ないのです。せめて、十里単位できっちりして欲しいのですが、きっちり計算すると一里でも割り切れず小数になるのです。

                               未完

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