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2019年1月30日 (水)

新・私の本棚 季刊邪馬台国第35号 「里程の謎」 8 1―2

 8 「魏志」「倭人伝」の里程単位      藤原俊治
  私の見立て ★★★★☆ 熟読すべき労作               2019/01/30

*序論
 本論は、60ページ近い労作ですが、専門学術誌「計量史研究」の連載記事(1979,80)に加筆訂正を加えたものです。初出時の批判、応答を承けて熟成している点が感じ取れます。学術誌掲載ということで、関連史料とそれに関する先賢所説総覧が充実し、百五十件を越える付注も貴重です。

 また、冒頭に、過去の邪馬台国論争における諸論輻輳を鎮めるべく核心を提示し、それに即した論考としていて、読者として安心して後を慕うことができます。総合的な論考とは、かくありたいものです。

 氏は、煩雑を厭わず邪馬「台」国論争と書いて、この国名が依然審議中であることを、初心の読者に無用の刷り込みを避けたのは、まことに賢明です。

 当方としては、氏の論文作法に異論は無く、採用史料もところを得ているので、大部の割には短評に止めることができたのです。

*論点の明示
Ⅰ 里(歩)程論争をめぐって
 「はじめに」と総序があり、以下、「従郡至倭」一万二千里程の議論です。

*倭人伝里程由来
 「長里説」「短里説」、そして、「地域短里説」「魏晋朝短里制」は、「里程の謎」に注目している本誌読者諸兄に周知と見て、説明を略します。

 当部分で、当方が参考としたのは、秦漢魏里制は、秦始皇帝の布令に基づくもので、具体的には、戦国諸国を滅ぼして天下を統一した秦が、6尺を一歩とし、(結果として)300歩を一里とするという単位系徹底宣言です。
 時に言うように、秦が、普通の周制を廃したものと限らず、「同文同軌」の一環として、秦度量衡により諸国度量衡を全廃、統一したものです。

 秦支配下の諸地は悉く秦制を敷いたのです。法治主義により、全国に官吏を派遣して苛政を押しつけ徹底させた秦ですから、間違いないところです。

*魏晋朝短里説の非道

 当説は、古田武彦氏が、安本美典氏提唱の倭人伝短里を採用した際に、三国志編者陳寿の編纂方針から、全魏志の里制が短里と確信したことから生まれ、論証として三国志の里制記事検証という壮図が生じたものです
 
 
古田氏は、本節の根拠として、魏朝創業の文帝曹丕が、秦漢旧弊を廃する目的で里制改訂したと推定したのですが、特に根拠はなく、また、三国志全本文の各用例の検証は、素人目にも、不調に終わったと見えます。

 文帝曹丕は禅譲を奉じ、戦時の国内に大混乱必至の里制変更を施行するとは、到底考えられないと見ます。ただし、後継明帝が、景初改暦、祭礼変更と共に里制改訂したなどの反論で切りがないので、以下、別義とします。
 

 もちろん、三国志も晋書も、この大事件に言及していません。つまり、論拠となる文献資料が皆無なのです。
 
 
私見では、本説は、とうに使命を終え、廃却するべき時が来たと感じるものです。

                               未完

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