新・私の本棚 「邪馬台国」徹底論争第1巻言語、行程・里程編 3/11
新泉社 1992年6月刊 東方史学会/古田武彦編 2019/03/19
◎中国古典の中の里・歩・尺 白崎 昭一郎
冒頭で、白崎氏は、倭人伝に、筑紫の甕棺が書かれてないと指摘しています。また、近畿地方で大量出土する銅鐸が書かれてない点は、三世紀の倭人伝当時、近畿は、すでに古墳時代で、銅鐸は廃却されていたものとしています。
この時代判断は、卑弥呼の墓が古墳であったことで裏付けられるとしています。どうやら、氏は、確信した近畿説のようです。
◎中国古典の中の里・歩・尺 白崎 昭一郎
冒頭で、白崎氏は、倭人伝に、筑紫の甕棺が書かれてないと指摘しています。また、近畿地方で大量出土する銅鐸が書かれてない点は、三世紀の倭人伝当時、近畿は、すでに古墳時代で、銅鐸は廃却されていたものとしています。
この時代判断は、卑弥呼の墓が古墳であったことで裏付けられるとしています。どうやら、氏は、確信した近畿説のようです。
・考古学の時代劣化
それはそれとして、「古墳時代は四世紀開始が考古学の大勢であるが、近頃三世紀に上がると考えている考古学者がかなりある」と述べていますが、これは、世上見られる、考古学の「学」としての秩序崩壊を示していて、先ずは、学問の見解は数で決めるものではないという原則や、そうであるなら、その大勢が同意しないうちに、異論が台頭して新原則を形成した形勢も、学問として異様なものを感じさせます。必ずしも数で決めるべきものでないとしても、広く衆議して方向付けするべきではないでしょうか。
白崎氏は、万事、論証を歴て論説する方ですが、以上の見解は、何か、政治的なものを感じさせ、不穏です。
それはそれとして、「古墳時代は四世紀開始が考古学の大勢であるが、近頃三世紀に上がると考えている考古学者がかなりある」と述べていますが、これは、世上見られる、考古学の「学」としての秩序崩壊を示していて、先ずは、学問の見解は数で決めるものではないという原則や、そうであるなら、その大勢が同意しないうちに、異論が台頭して新原則を形成した形勢も、学問として異様なものを感じさせます。必ずしも数で決めるべきものでないとしても、広く衆議して方向付けするべきではないでしょうか。
白崎氏は、万事、論証を歴て論説する方ですが、以上の見解は、何か、政治的なものを感じさせ、不穏です。
・短里肯定
さて、本論の里程論ですが、氏は、古田氏の魏晋朝短里説に反論を加えていて、氏の持論を述べています。
まず、古田氏の所説で、倭人伝の里程部分が短里で書かれていることについて、氏を含めた多くの研究者が同意していると認めています。もっとも、前項の山尾氏は頑として反対しているので、全会一致でも無いようです。
さて、本論の里程論ですが、氏は、古田氏の魏晋朝短里説に反論を加えていて、氏の持論を述べています。
まず、古田氏の所説で、倭人伝の里程部分が短里で書かれていることについて、氏を含めた多くの研究者が同意していると認めています。もっとも、前項の山尾氏は頑として反対しているので、全会一致でも無いようです。
・中国内短里の否定
その前提として、(三国志)中国国内記事で短里として理解できるものがないとしています。また、古田氏が根拠とした韓伝里は倭人伝里で、中国記事でなく意味が無いとします。また、古田氏の短里周制起源説にも、同意できないとしています。正史記事に基づく発言であり、有力なものと考えます。
以下、史記、漢書の用例について考察し、いずれも短里と認められないとしています。まことに論理的であり、首肯せざるを得ないものです。
思うに、倭人伝は、倭人伝里で書かれているとした上で、三国志全体や史記、漢書は短里でないとする考察なので、まことに妥当なものと思います。
・古田説~「魏晋朝短里説」の否定
この論点では、古田氏に全く分がなく、古田氏の「倭人伝と魏書の里は同一」とする強弁は、倭人伝が倭人伝独自の短里で書かれたとする短里説の核心部を道連れに、一括して否定される事態を招く不合理なものと考えます。
この論点では、古田氏に全く分がなく、古田氏の「倭人伝と魏書の里は同一」とする強弁は、倭人伝が倭人伝独自の短里で書かれたとする短里説の核心部を道連れに、一括して否定される事態を招く不合理なものと考えます。
この項完
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