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2019年5月26日 (日)

新・私の本棚 番外 歴史秘話ヒストリア 「まぼろし」の王国 ニッポン 1-2

「歴史秘話ヒストリア まぼろしの王国 銅鐸から読み解く ニッポンのあけぼの」
私の見立て ★★★★★ 必聴 (NHKオンデマンドで公開中) 2019/05/26

□総評
 当番組は、バラエティー番組でなく、参考文献まで明らかにした歴史情報番組であり、敬服に値します。
 とはいえ、原題の「まぼろしの王国」は、誤解必至でこれでは「ニッポン」は「まぼろし」との意となりますが、それで良いのでしょうか。当ブログは、勝手に補筆しました。

□偏った検証
 当の銅鐸談義で不思議なのが、銅鐸が近畿固有だから仕方ないのでしょうが、近畿東海圏で懸命に辻褄合わせしていることです。
 まずは、舌が銅とか言っていますが、元々、鐸は、鳴らすもので、銅の舌を使うのが銅鐸、木片で叩くと木鐸です。銅は鐸の材質ではないのです。
 極めつけが、どこやらの宗教施設に阪奈勢力(ここではそう呼ぶ)が総集合して、卑弥呼を共立したとの、筑紫も吉備もない無法な独断です。事は、倭人伝記事の解釈ですから、孤説としての畿内説の支持はともかく、学術論で、僻遠の筑紫を無視するのはどんなものか、大いに疑問です。

□迷走する銅鐸消失のなぞ
 また、阪奈勢力の支配圏で数百年祭器に使用され、末期には、巨大な権力象徴となっていた筈の銅鐸が、忽然途絶した図式に、説明が付かないのです。
 古代において、宗教は、家族、さらには、氏族全体で讃えていたので、統治者個人が、自身の信仰として銅鐸を棄てて別の「シンボル」に乗り換えるようなことはできないのです。まして、銅鐸に仮託した「国家信仰」を大々的に破壊、廃棄したという説は、ただだれかが言い立てていると言うだけでは信じがたいのです。

□意味不明の例え話
 説明役の歴史学者の説明が何ともお粗末です。後世の戦国時代の様相を「イメージ」と言うのですが、まさか、調理具材の盛り付け見本の言い訳でもないでしょうし、宗教の偶像画でもないでしょうが、いずれも、せいぜいが、小説、映画、テレビドラマの世界であり、要は、学問的成果で使うべき言葉ではないのです。御自分の言う事が、面識もなく、問い返しもできない、一般の視聴者に正しく伝わらなければ、折角のご託宣が、ただの寝言になってしまうという恐れはないのでしょうか。
 さらにまずいのは、戦国乱世での天下統一の動きが歴史の必然で徳川政権に収束したとの安易な絵解きで、一般視聴者もこれには納得しないでしょう。何のための類推かわかりませんが、子供もだませない、子供だましと思われる時代錯誤と状況錯誤です。

*虚妄の天下、分相応の天下
 言い立てている「天下」は虚構です。三世紀、文字も文書連絡も無く、自分の領分以外は一切不詳不明で、天下はなく統一の気概もないのです。かたや、戦国時代は将軍権力が京都周辺にしか通用していなくても、「天下」の意識はあったのです。
 因みに、当番組の後の「三好長慶」特集では、室町末期、「天下」とは畿内のことだったとされていました。それなら、当時の政権、衰退した室町将軍の支配範囲が「天下」なので分相応と言うしかなく、太古以来、そのような理解であったとすれば、特に驚くことはなく、後世人が勝手に「天下」とは日本列島全体だと言い立てていることになります。いや、人の話は聞いてみるものです。

*無意味な覇権
 古代に覇権の意義はないのです。物資の大量輸送ができない、貴金属などの財宝がないう背景では、隣国侵略で得るのは土地と農民であり、下手をするとお荷物です。広域を制覇しても、遠隔地とは連絡困難、派兵徴兵は一段と困難で、多くの犠牲を払って武力制覇、広域支配しても無意味なのです。
 戦国時代とて、覇権に意義があれば、早々に収束していたはずです。

                                未完

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