新・私の本棚 石野 博信 古代住居のはなし 1/2
私の見立て ★★★★★ 必読 西川弘文館 1995年5月刊 2019/05/26
□総評
本書背表紙の惹き句が、今日溢れるこけおどしの惹き句とは別次元で、誠に端正、的確に本書の意義を訴えます。
「古代の人々は、どのような家に住み、どのような生活をしていたのだろうか。全国各地の遺跡の発掘成果をもとに、住居の構造や材のしくみを解き明かす。さらに、対外交流にも着目して、日本人の住まいと暮らしの原点を探る。」
石野氏の本著作は、堅実で、遺物、遺跡の実見に根ざした、広範な知見に基づいて思索しているので、この惹き句に付け加えることはありません。古代史を学ぶものには、必読書です。
以下、勝手に書き述べているのは、素人の率直な意見に過ぎません。
*ゴミ捨て場の土器片について
遺物の観察により、いずれの大規模集落もゴミ捨て場があったと見ていますが、一方、継続的に破損土器類の廃棄を行ったにしては少量とみています。
素人の勝手な推測ですが、人が愛用する器物にはその人の魂が染め付けられているとして、葬礼で持ち物を副葬し、それ以外は、形見分けされ、さほど重要な人物でない時は山野にばらまいて自然に返したかなどと思います。つまり、よく言われる共同ゴミ捨て場は、厄落としの穴かもしれないのです。
いずれにしろ、当時の人々の行動は、文書記録されていないので、憶測しかないのですが、根拠のない思い込みになっていないでしょうか。
いずれにしても、各地の住民が重大な土器を携えて山川越えて、首都に来駕するという図は浮かんでこないのです。何かの思い過ごしではないでしょうか。
逆に、現地の窯業関係者の食を絶やさないために、ある程度の土器が、次々に廃棄される仕組みがあったのでしょう。
*枘穴加工について
石野氏は、冷静に遺跡、遺物を観察し、通常想定されるより以前から、柱の木材に枘穴(ほぞあな)を設け、他の柱なり、梁なりを貫通させる構造を想定していて、それを、外来の新技術の表れとみていますが、ちょっと、不思議な言い回しです。
柱材に使用されている丈夫な木材に貫穴を加工するには、鋭利で頑強な鉄製工具が必要です。いくら新技術を学んでも、実現手段がなければ、「猫に小判」、歯が立たなければ食べられないのです。
*扠首屋根
家屋の屋根は、ある程度大きくなると、各材の組み合わせに、特別な技術が必要なのですが、その一つが扠首(さす)構造だそうです。
氏は、白川郷の合掌造り家屋の屋根に、扠首構造を見いだして、これが、遙か昔、あるいは、弥生時代から行われていたのではないかと推定しています。合掌造り家屋の屋根は、最小限の枘組、貫穴によって各材をくみ上げ縄まきで締め上げた構造で、長年の風雪、積雪の荷重に耐えています。
全体として、鉄製製材大工道具を駆使した技術集団が来訪したようです。
未完
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