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2019年5月26日 (日)

新・私の本棚 番外 歴史秘話ヒストリア 「まぼろし」の王国 ニッポン 2-2

「歴史秘話ヒストリア まぼろしの王国 銅鐸から読み解く ニッポンのあけぼの」
私の見立て ★★★★★ 必聴 (NHKオンデマンドで公開中) 2019/05/26

*毛利の遺訓
 後世、山口の大内氏が大軍を率いて上洛し、反抗勢力の鎮圧に奮戦しても、将軍権力は復興しなかったのです。中国中部の地場勢力毛利氏は、大内氏の下、悲惨な戦いだったとのことです。後に、取って代わった毛利元就は、「天下を狙うな」と遺訓したほど天下の重荷に懲りていました。説明者が「天下」に高い意義が認められていたと思う時代も、その程度です。

*規模の得
 別の言い方をすると、「規模の得」がなければ、勢力拡大しても国力を損じ、衰退するのです。農耕社会に他国の住民を取り込んでも、食糧消費が増大するほどに増産効果は無いのです。骨折り損の草臥れ儲けという風情です。
 と言うことで、氏の言う「歴史の必然」による統一国家形成は「なかった」のです。倭人伝が描くのは諸国併存、共存で、女王の専政など描かれていないのです。

銅鐸風俗の終焉
 言い古されていますが、阪奈勢力の銅鐸風俗は、領域内で長年安定して存在したが、古墳時代開幕前に、忽然と終焉したと言います。有力な説明は、銅鐸に一顧だにしない勢力が侵入して支配層を駆逐したとの簡明な絵解きで、図示すら必要ないのです。
 阪奈勢力に執着する学派は、頑として、そのような政権交代を認めないし、女王が、銅鐸の影が見られない筑紫にいた可能性も認めないから、何とも、不思議な説明になっています。不思議な偏向と言うか欠落です。

*全国一律か地域独立か
 過去の別番組では、結構な費用を掛けたと思われる演出で、列島全体が迅速に一つの風潮に染まるような「絵」を次々書き替えては、無理矢理視聴者に押しつける「紙芝居」で、時代風潮の浸透と推移を描いていましたが、今回の番組制作者は、今回の打って変わった局地的演出について、何も思わなかったのでしょうか。

*銅鐸工房の盛衰
 素人の勝手な推定ですが、絵解きされた銅鐸工房の流れを見ると、数世紀の安定の果て、大型銅鐸が、適者生存の原理による諸工房淘汰を齎したと思われます。

 同一形状の銅鐸を暦年製造するのは、伝統の代々継承で対応できますが、大型化を迫られると伝統「ノウハウ」は無効で新規技法開発が必要です。「ノウハウ」は、要するに失敗回避の知恵です。ノウハウなき工房は、失敗連続で首になり、雇い主はノウハウのある失敗なき工房を雇うのです。

 講釈師まがいの戦国絵巻と違い俗受けしなくても、あり得る流れでしょう。

 そして、銅鐸巨大化の結果、一部工房は「天下」を把握したが故に、衰亡の道をたどったのです。何しろ、小ぶりの銅鐸なら、数の威力で数年に一回更新されたでしょうが、巨大銅鐸はめったに更新されず、大型化した設備も空しく、遊休工房と化したと思われるのです。閑古鳥、ぺんぺん草です。
 また、信仰の伝統を踏み外した巨大銅鐸は、吊して鳴らせないために、参拝して願掛けできない姿になり、氏子が挙って見放したのかも知れません。何の記録もないので、勝手に言うのです。

□結語
 いろいろ説明を頂いたものの、実見、実証部分の丁寧さの割に、論考部分は、先の戦国「イメージ」談義のように、現実を離れた、詰めの甘い、独善的な内容になっていて残念です。
 大体、古代史談義に、「イメージ」のように意味のいい加減なカタカナ言葉を援用したり、「まぼろし」の王国と称するのは、時代錯誤めいて、軽率不用意です。別番組と違い、惜しい脱線ですが。

 いや、当番組と言えども、近未来、別番組進行役のもと、ジャンク番組化を危惧させる惹き句を唱えているので、少々心配ですが。

                                完

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