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2019年6月15日 (土)

今日の躓き石 毎日新聞「タカラヅカ余話」暴走 壬生義士の汚名

                        2019/06/15

 本日の題材は、毎日新聞大阪朝刊13版文化面の囲み記事「銀橋のきらめき タカラヅカ余話」~幕末もの、であり、タカラヅカの出し物「壬生義士伝」の紹介なので、本来は、当ブログの圏外なのですが、筆者たる演劇評論家が、歴史観のボロを見せているので、一言批判したものです。

 ここで、筆者は、壬生義士伝の主人公が私怨のない相手を殺しているとなじっているのが、何とも不思議な世界観です。

*時代無視のリベンジ主義
 どうも、氏は「人は私怨があれば人を殺していい」という「リベンジ」主義を主張しているようですが、それは、時代と国情を越えて、ただの人殺しです。そして、主人公は、恨みも何もない相手を殺すという不満を、家族の生計を支えるという「己の義」のために押し殺して、つまり、新選組内で一二を争う剣技の持ち主であり、「出稼ぎ」として金のために冷酷な殺人を演じたと捉えているようです。感想は、もちろん個人個人の勝手ですが、大きく的を外していて、素人目にも、誤解と言わざるをえないでしょう

*義士の義
 素人考えながら、新選組は、朝廷から大政を委ねられた征夷大将軍が、天子の宸襟を脅かす暗殺集団、テロリストを討滅するために臨時に設けた京都守護職が臨時に設けた治安維持部隊であったと思うのです。そして、新選組は、発足当時幕府の正式の機関ではなく、京都守護職預かり、つまり、幕臣でなく非正規の身分であったのですが、現実には、時の天子の命を受けて大義のために活動していたのであり、そのように、公式の幕命や藩命でなく、非正規の使命を命がけで体現したことを見て、原作者は「壬生義士」と題していると思うのです。少なくとも、隊長、副長など、創立時の面々は幕府からの召集を受けて江戸で参集したとはいえ、主人公は新選組の募集に応じて遙か京都に馳せ参じたのであり、「義」の感じ方は、それぞれ異なっていたでしょうが。

*汚名の起源
 後に、幕府の朝廷支配に抗するという美名の下に挙兵侵攻までしたテロリストの黒幕長州が新政府の権力を握ったため、新選組は無法者扱いされましたが、冷静に見れば、その時その場の大義の下に戦っていたと見ることができるのです。本作は、そのように正しく復元した「大義」の下、主人公が家庭人としての「義」を貫いたというのでしょうが、ソリーレ覇、以上のような時代の要請した大義の前提があってのことです。

 こうして考えてみると、氏は、何か、ことの趣旨を勘違いしているようです。新選組は、隊の公務として、テロリストの策動を挫くべく武力鎮圧しましたが、それが私怨なしの殺人だから不正義であると言う理由をお伺いしたいところです。

*時代錯誤の男性至上視点
 末筆ながら、「原作が男性に人気がある」と断じているのは、以下の「男のロマン」なる断定と共に、今日の時代風潮に反して、性差の押しつけであり、賛成できません。
 壬生義士伝に描かれた、家族のために命がけで蓄財する生き方は「男のロマン」などとは別世界であり、そのような生き様が女性に人気が無いとは思えないのです。氏の歴史観、世界観は、時代錯誤ではないでしょうか。

以上

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