« 今日の躓き石 大谷翔平の誕生日に忌まわしい呪い 「力勝負 剛腕にリベンジ」 毎日新聞/共同 | トップページ | 今日の躓き石 フレッシュ球宴に毎日新聞の汚れた祝福「リベンジ」 »

2019年7月12日 (金)

新・私の本棚 番外 倭人伝道里論~参問周旋にとどめさす

                          2019/07/11
□始めに
 「とどめさす」というと、なにか血のにおいがするように受け止められるかも知れませんが、ここでは、ことの行き着くところです。
 京のわらべ唄「まるたけえびす」は、京の東西通りの名を北から南にうたい、最後、「くじょう とうじで とどめさす」「はいおしまい」です。
 つまり、長年の論争でいろいろ意見は出ましたが、ここで南の端なので、もうおしまいにしましょうと言いたいのです。まだおしまいにしたくない人は、北に戻って、町中でいろいろ言うのでしょうが、当方としては、ぼちぼち、おうちに帰りましょうよというのです。
 京のわらべ唄「いんでこだいもんじ」は、大文字の送り火がとぼったらお盆もおしまい、懐かしい思い出は向こうに帰ります、というものです。
 古いわらべ唄ですが、語り尽くしたらおしまいにしたいものです。

*参問、周旋 縮めて「参周」
 参周は、倭人伝旅程、道里がひとしきり語られて、侏儒国、裸国という最果ての国について語った後、締めくくるように、「參問倭地絕在海中洲㠀之上或絕或連周旋可五千餘里」と書かれたものです。

 つまり、倭人伝の主目的である「倭地」の旅程、道里を総括すると、倭地の始まりである狗邪韓国の海岸から、最終到達点である邪馬壹国まで、「順次訪ねた」所、「大変大雑把に言うと五千里」(可五千余里)だったと記しているものです。

 端的に言うと、末羅国以降の行程に、傍路の投馬国が里数無しで水行二十日と紛れ込んでいて末尾の総所要日数、水行十日と陸行一月も、とかく誤解されやすいため、あえて、倭地内の経路里数を追加して明記したのです。
 単なる重複記載は、陳寿として採用できないのですが、観点を変えた記事で、いわば、検算の機会を作っているので、大変高度な配慮と言えます。今日の読者は、いくらでも戻して読めるし、手元にメモ帳や計算機を置いているので、念が入りすぎていると褒める/貶すのでしょうが、当時は、行程といえども何も便利な手段がなく、数字に強い側近の手助けが必要になるので、まあ、不愉快になる可能性が高いのです。
 これを重複記事としか思えないと感じたら、是非、周辺の先輩の意見を聞いてほしいものです。全然別の記事だと言うでしょう。

 追加して明記しないと、高貴な「読者」から、わからんじゃないかと叱られるのを恐れたのですが、行程記事に手を入れる原史料介入を避けていてわかりやすさと原文尊重を両立させた陳寿の編纂姿勢を物語っています。(子供ではないので、好き嫌いで書いているのではないのです)

 ちなみに、過去色々論議されている参問周旋の意味ですが、共に日常使われる単語なのでさらりと読み取ればいいのです。

 ただし、このように読み解くことは、いわゆる、「伊都国以降直線行程説」を否定すると共に、邪馬壹国を伊都国のすぐ南にとどめてしまうので、「畿内説」論者や、非「福岡県」論者が、受け入れられないものと推定します。それが、陳寿の編纂意図ですから、なんとも仕方ない所です。
 先に書いたように、当方の本論は、ここらで「参周」論議にとどめを刺したいと言うだけで、畿内説」論者や、非「福岡県」論者は、別の論点で議論されたらいいと思うのです。一歩ずつでも、議論を前に進めたいのです。

*明快な表現
 ちなみに、陳寿は、海を渡って倭地に行くのは、大河(中国語で言う「水(すい)」)を渡るようなもので、途中に中州があって、向こう岸には陸地が続いていると、陸封された中原人読者の理解しやすい言い方としたのです。

                                以上

« 今日の躓き石 大谷翔平の誕生日に忌まわしい呪い 「力勝負 剛腕にリベンジ」 毎日新聞/共同 | トップページ | 今日の躓き石 フレッシュ球宴に毎日新聞の汚れた祝福「リベンジ」 »

倭人伝随想」カテゴリの記事

新・私の本棚」カテゴリの記事

倭人伝道里行程について」カテゴリの記事

コメント

福島雅彦さん
 コメントに感謝しますが、とうしろうには意味不明なので、以下、逆コメントを試みます。
>
>参問倭地…周旋可五千餘里 =郡使(魏使)が直接観て回った総延長が五千餘里。
 誰の意見か不明です。少なくとも、現在、当ブログ筆者は「総延長」などと
意味不明な時代錯誤は書かないのです。
>
>ぐるっと一回りではない。
 記事に同意いただいたと言う事でしょうか。
>
>「狗邪韓國」領内千五百里(逆算)+海峡横断三千餘里+末盧國〜「伊都國」五百里=五千餘里。
 何のことか、皆目わかりません。少なくとも、当記事へのコメントにはなっていません。
 記事は、一段とひねくって書いているので、全体へのコメントは難しいと思うのです。
 ついでながら、漢数字表記は、「業界」で珍しい、賢明かつ妥当な書き方ですが。 
>
>∴郡使(魏使)は「伊都國」から先へは行っていない。常に留まる処「伊都國」止まり。
 魏使が伊都国止まりだったか、そうでないかは不明と思われます。
 何も記録がないからわからないと言うべきです。
 当記事は、一路五千里なら、投馬国を勘定に入れていないのは自明だと言うだけです。
 まあ、皇帝の名代である魏使は、任務外の脇道には一切寄っていないでしょうが。
>
>以上福島雅彦説
 学術的には、以上は、だれかの断片的な「思いつき」であり、[説]ではありません。
 まして、素人ブログへのコメントで、新説エビデンスと言われても迷惑です。
 以上、勝手な意見です。

参問倭地…周旋可五千餘里 =郡使(魏使)が直接観て回った総延長が五千餘里。

ぐるっと一回りではない。

「狗邪韓國」領内千五百里(逆算)+海峡横断三千餘里+末盧國〜「伊都國」五百里=五千餘里。

∴郡使(魏使)は「伊都國」から先へは行っていない。常に留まる処「伊都國」止まり。

以上福島雅彦説

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 今日の躓き石 大谷翔平の誕生日に忌まわしい呪い 「力勝負 剛腕にリベンジ」 毎日新聞/共同 | トップページ | 今日の躓き石 フレッシュ球宴に毎日新聞の汚れた祝福「リベンジ」 »

お気に入ったらブログランキングに投票してください


2024年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー

  • YouTube賞賛と批判
    いつもお世話になっているYouTubeの馬鹿馬鹿しい、間違った著作権管理に関するものです。
  • ファンタジー
    思いつきの仮説です。いかなる効用を保証するものでもありません。
  • フィクション
    思いつきの創作です。論考ではありませんが、「ウソ」ではありません。
  • 今日の躓き石
    権威あるメディアの不適切な言葉遣いを,きつくたしなめるものです。独善の「リベンジ」断固撲滅運動展開中。
  • 倭人伝の散歩道 2017
    途中経過です
  • 倭人伝の散歩道稿
    「魏志倭人伝」に関する覚え書きです。
  • 倭人伝新考察
    第二グループです
  • 倭人伝道里行程について
    「魏志倭人伝」の郡から倭までの道里と行程について考えています
  • 倭人伝随想
    倭人伝に関する随想のまとめ書きです。
  • 動画撮影記
    動画撮影の裏話です。(希少)
  • 古賀達也の洛中洛外日記
    古田史学の会事務局長古賀達也氏のブログ記事に関する寸評です
  • 名付けの話
    ネーミングに関係する話です。(希少)
  • 囲碁の世界
    囲碁の世界に関わる話題です。(希少)
  • 季刊 邪馬台国
    四十年を越えて着実に刊行を続けている「日本列島」古代史専門の史学誌です。
  • 将棋雑談
    将棋の世界に関わる話題です。
  • 後漢書批判
    不朽の名著 范曄「後漢書」の批判という無謀な試みです。
  • 新・私の本棚
    私の本棚の新展開です。主として、商用出版された『書籍』書評ですが、サイト記事の批評も登場します。
  • 歴博談議
    国立歴史民俗博物館(通称:歴博)は歴史学・考古学・民俗学研究機関ですが、「魏志倭人伝」関連広報活動(テレビ番組)に限定しています。
  • 歴史人物談義
    主として古代史談義です。
  • 毎日新聞 歴史記事批判
    毎日新聞夕刊の歴史記事の不都合を批判したものです。「歴史の鍵穴」「今どきの歴史」の連載が大半
  • 百済祢軍墓誌談義
    百済祢軍墓誌に関する記事です
  • 私の本棚
    主として古代史に関する書籍・雑誌記事・テレビ番組の個人的な読後感想です。
  • 纒向学研究センター
    纒向学研究センターを「推し」ている産経新聞報道が大半です
  • 西域伝の新展開
    正史西域伝解釈での誤解を是正するものです。恐らく、世界初の丁寧な解釈です。
  • 邪馬台国・奇跡の解法
    サイト記事 『伊作 「邪馬台国・奇跡の解法」』を紹介するものです
  • 陳寿小論 2022
  • 隋書俀国伝談義
    隋代の遣使記事について考察します
無料ブログはココログ