新・私の本棚 番外 「今どきの歴史」 2019/07 不思議な視点と視覚 3/3
私の見立て★★★★☆ 2019/07/24
■■「東アジア最辺境」の悲劇
ここで、東アジア最辺境と、時代錯誤の錯辞が出て来ます。
当時、「アジア」を認識していたものはいないから「東アジア」は錯辞であり、最辺境と言うには、中心、周辺、辺境、最辺境の階層が前提と思われますが、何も説明もないので不可解なだけです。論者の「生徒」は知っていても、一般読者には耳慣れない呪文で、記者が絵解きしなければ、論者の意図が伝わらないのです。報道の者の責務ではないかと考えるものです。
*結語の美
論者は、記者の前振りに続いて、結語に入ります。
「文字が本格的に使われておらず」とは、墳丘墓被葬者の視点でしょうか。一瞬戸惑います。
論者の言い分で大変もっともなのは、後世人の浅知恵で「合理性」を難詰するのは時代錯誤の錯辞であり、当時の関係者は、時代なり、統治者なりの合理性の最大限の発露として墳丘墓を築いたとの卓見です。
当時、文字がなかったので中国文化圏の事象として「文化」と呼ぶのは不出来ですが、墳丘墓に表現された当時の為政者の理念は、現代語で言う「世界」に誇りうる「文化」というのが論者の結論であり、圏外情報の素人くさい前振りで、論者の知性を疑われるような愚は避け、ご自身の錚錚たる学識の核心を披露いただければ、これ以上の知の饗宴は無いと思うのです。
*急転の没落
いや、折角の結語で、東アジア全体の墳丘墓制が、世界に類のない遺産であると言いながら、全世界を足蹴にするように「人類が二度と持つことのない文化」などと、今後の人類文化の展開に呪いをかける言葉を吐き捨てていて、椅子からずり落ちるのです。ご両人とも、気は確かですか。
続く記者コメントは、論者の負の遺産を背負って、反知性的な夜郎自大放言で、論者の論考の足を引っ張るのです。
古代人は、古代人の知りうる世界情報をもとに、最善、最高の合理的事業を行ったのであり、現代人にも知り得ない残る全世界の賞賛を押しのけないものであって欲しいのです。
*まとめ
論者の展開した論考は、「日本考古学」の圏外から、論拠不明の憶測を述べて、学術的に無法、一般読者に対し、誤解を与えるものになっています。
記者は、論者の展開した論考を、十分咀嚼できないままに、自身の未熟な知性、語彙をなすりつけて、贔屓の引き倒しになっています。
折角、適確な結語に到着していながら、論者が、夜郎自大な感慨を吐露したのは大変勿体ないところで、記者が大人の分別で適確に舵取りしなかったのが惜しまれます。
港に入って船を割るのは、水先案内人の不手際です。
*蛇足
風評の類いですが、巨大墳丘墓は、権力者が圧政を敷き、「奴隷同然の強制労働」を課して次々に完工したとの見方が囁かれています。論者は、当時の権力者に妥当な合理性があってこれだけの大工事を成し遂げたと弁護していますが、多少の弁明になったとしても、強制労働では無かったとするには、労働の対価としてどのような褒賞、アメを与えたかが問われるでしょう。
考古学者は、必ずしも当時の権力者の合理性を弁護する必要は無いでしょうが、世界遺産に登録する上では、黒い疑惑は糺す必要があるように思えるのです。「いたすけ」古墳が、公然と、益体もない現代遺物であるコンクリ橋を、世界遺産の保存対象にしているのと並ぶ「汚点」でしょう。
完
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