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2019年8月26日 (月)

新・私の本棚 番外 毎日新聞「今どきの歴史」 沖縄考古学会の試錬

 私の見立て★★★☆☆ 購読料相当ないしそれ以上のもの     2019/08/26

 題材は、毎日新聞夕刊文化面の月一歴史コラムで、今回は、発足五十年目前の沖縄考古学会会長上原靜(しずか)沖縄国際大教授の高説の紹介です。

*お「熱い」のは嫌い
 「グスク時代の研究が熱いです」とは、とんでもない開幕ですが、いくら、発言の引用報道としても、史学者として、最新の研究状況を毎日新聞読者に伝える際に、このような低次元の言葉の乱れは、ご本人に勿体ないものと思われます。

 本文として、一般読者になじみのない「グスク時代」には説明がありますが、全体に、従来と今回紹介との時代区分の差異が不明確です。
 教養豊かな担当記者には自明でしょうが、沖縄における「先史時代」とは、いつどのような時代なのか説明がありません。七世紀以降のようですが、「先史」とあるのが、石器時代の言い換えなのか無記録時代の趣旨か不明です。

 遣唐使が「盛んに」往来したといっても二十年一回程度で、誇大視する根拠が不明です。遣唐使来訪で、物資買付けならぬ物々交換で中国銅銭を代価としたとは首尾が一貫しません。貨幣経済がなければ、貨幣を「富として」蓄えないから、装飾品と見なされていていたとする定説が、今回、何が原因で、貨幣経済ありきと変わったのでしょうか。

 以上は、素人考えですから、専門家にしたら、子供みたいなこと言うな、勉強して出直して来いというものでしょうが、ここでは、歴史マニアならぬ一般人の意見として、初見の所感を率直に述べたものです。

*南海の提言
 さて、今回も、記者は、氏の発言をさかなに自説を展開しているのでしょうが、氏の提言と記者持論が混沌として最後の訓辞は難解になっています。

 「本土は何かと沖縄に固有性を求めがちだと思うが、それも平板すぎる。沖縄考古学の今後の新しい発信に注目したい。」

 ここは、記事の地の部分で、記者私見のはずですが、それにしては、随分粗暴な押しつけと感じられます。
 「本土は..がちだ」は、我々一般人への批判らしいのですが、少なくとも、当方は沖縄の文化的独自性が好ましくても、ないものや物足りない所をひねり出すように強要するつもりなど、全くないのです。この下りが記者の自省の趣旨だとしたら、勝手に自戒/自罰するにとどめて、他人を巻き込まないで欲しいものです。
 沖縄考古学の「新しい発信」で記者は何を要求しているのでしょうか。当方の受信機のスイッチは切れているので、無縁の衆生です。
 「平板」とは、どんな趣旨でしょうか。この場で「的」の付かない名詞もどき、隠れ形容詞「平板」の起用は、場違い、かつ、異例で、氏の玉稿に「平凡」の誤記があったかと勘ぐり、ここで頓挫しました。
 また、肯定的「すぎる」かとも惑いました。批判的用法なら、「平板にすぎる」と言うものと思います。そして「平板」は堅実さへの賛辞と見えます。

 全体として、「今どき」風「違和感すぎ」でしょうか。報道は、なによりも平明・明解に願いたいものです。

 「熱い」と若者言葉で開幕しても、最後は、読者になじみやすい言葉でしめるものでしょう。先に挙げた言葉は、氏の発表の解説記事の総括に相応しいとは思えないのです。

*新説待望の危惧
 それにしても、考古学は、既に起きたことを遡って説き起こす「学問」ではないのでしょうか。記者は、考古学に革新と破壊を求めているのでしょうか。
 ここで説かれている新説待望は、新聞記者が「紙面映え」のために求めるものであって、全国紙の高名な記者がこのように熱弁を振るうのは、ほとんど「強要」ですが、だからといって、学問の徒が血道を上げるべきものではないと思うのです。

 毎回ながら、記者は、ご自身の使命を勘違いしているように思えます。

                                以上

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