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2019年10月27日 (日)

新・私の本棚 「魏略西戎伝」条支大秦の新解釈 壱 導入篇  4/4

                             2019/10/27
□誤釈の起源 Origin of Speculation
 魚豢は、安息国が小国という意識を維持できず、数千里にわたる超大国と誤解したため、安息国西界、つまり、西の果ては、はるか数千里の果てと見て、その西界から行くから条支国は安息帝国の西方と誤解したようです。
 そして、「大秦は、既知の莉軒であって大安息内部、小安息近傍」との端的な行文を誤解釈し、余計な何ヵ月という海上所要日数を書き足したのです。
 そのため、条支、安息並記と読んで「大海」地中海の西の「海西」と見て文を閉じ、直後に開始の海西記事が大秦記事と誤解され、さらに沢山の誤解を誘発したのです。何のことはない、条支は、大海、実はカスピ海のすぐ向こう岸であり、条支の向こうは(直に見えない)黒海だったのです。

*本当の条支探査
 本来の条支行きは、当然、船での移動でしょう。いくら軍人でも、虎や獅子は避け、難なく便船で渡海したはずです。因みに、条支は、海西にあって、大海カスピ越しに手に入れた小安息国物資を、主として、黒海越えで陸路流通し巨利を得ていたようです。ローマ同盟国の特権です。

*使命の達成報告 Mission Complete
 それはさておき、条支国の国情を見定め、今後の交情を約したことにより、甘英は、所記の使命を達成し班超西域都護に向かって東に帰ったのです。
 当然、甘英は、堂々たる文書をもって班超に復命し、班超は、それを嘉納すると共に、洛陽の皇帝に報告文書を届けたので、文書は皇帝のもとに届いたのです。不首尾の報告まであれば、班超は譴責を承けたでしょうが、そのような記録は残っていないのです。いや、記録はなくても、班超は顕彰され西域都護の任にとどまったから、甘英の使命達成は確実なのです。

□総括
 甘英の帰任後、老いた班超は、多年の西域の激務から退任して後漢の西域経営は活力を失い、皇帝の代替わりもあって急速に退潮し、西域は匈奴の意のままになったのです。但し、匈奴は、長年の漢との衝突の多大な被害により単于独裁が崩れ、西域諸国への圧政は一時緩和されたようです。
 と言うことで、甘英は、断じて使命放棄などしていないのです。
 冤罪を報じた報いとして、范曄は史家としての不名誉を承けるべきです。
 ここは、導入篇、序論ですから、要点だけにとどまるのです。

□西戎伝道里記事の語法について
 随分手間取りましたが、魚豢が認めた用字は以下のように集約されるのです。同時代の同趣旨記事ですから、特段の重みのある用例です。
 「従」は、書かれている地点からという意味です。
 「循」は、海岸線と直交する方向を言います。
 「去」は、続く地点から逆戻りすることを言います。(方角が逆転します)
 「復」は、道里の直前起点に戻ることを言います。
 「真」は、特に厳密な四分方位を言います。
 「転」は、概して直角に進路を変えることを言います。
 「歴」は、当該国の治所に公式に立ち寄ることを言います。
 「撓」は、地形に従い円弧状に撓んだ経路を行くことを言います。
 「陸道」「陸行」は、人畜を労して、陸上を行くことを言います。
 「水道」「水行」は、人畜を労せずして、水面を行くことを言います。
 「乗船」は、便船に乗ることを言います。
 「大海」は、必ずしも大洋でなく、塩水を湛えた水面を言います。                          
                             導入篇 完

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