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2019年11月 5日 (火)

新・私の本棚 牧 健二 「魏志倭人伝正解の条件」        3/3

                            2019/11/05 *追記 2019/11/09
*「陸行」・非陸行
 逆に、末羅から伊都は、厳密に「陸行」と明記されていて、他の傍線国経路には明記されていないので、自明の陸行と解釈しないといけないのですが、道里の計算外なので仮に船で移動する行程が混じっても「問題ない」のです。
 どの道、万里の道に、百里単位、一日単位の細々とした移動は、端数として無視できるので、少なくとも、中原史官である陳寿は意に介していなかったのです。

*道里記事の完結
 と言うことで、最後に全道里が、水行十日、陸行三十日、一万二千里と明記されて、道里記事が完結するのです。切りが良いので、簡単に、一日、三百里となります。陸行、水行が同程度と見なすと、水行十日で三千里、陸行三十日で九百里で見事に計算が合います。最初に一日三百里と決め渡海を一千里三回と切り良くしたので、うまく着地できたのですが。

 道里記事は、帯方郡から狗邪韓国まで七千里となるような里で、全体が一万二千里として書かれているのですが、各部の切りの良い数字を一律に定数で割って、普通里に近い「里」として切りの良い数字に換算するのは、今日の高度な数学計算でも、不可能だとお気づきでしょうか。(高度の数学というのは、当時の数学としての言い分であり、多桁計算、とくに小数点入り、分数計算、按分計算、割り切れない割り算などを言います。念のため)(説明がくどくなって申し訳ない)

*もつれた難題に対する簡明(エレガント)な解
 他にも、道里記事のもつれたとも見える難題に解を与えるご名算は、沢山あるでしょうが、ここに書いた解は、中でも、最も(数学問題で言う)エレガントな解であり、倭人伝全体の理解の糸口となるものと思います。もちろん、長年の課題(正解のある、回答者の知性を問う設問)であった「ゴルディアスの結び目」を解きほぐせず、刀でたたき切ったアレキサンドロス大王ばりの快刀乱麻は、勘定に入れないとしてですが。(説明がくどくなって申し訳ない)

*「囚われ」人の渾身の業績
 ここまでの講釈で、陳寿が、(まぼろしの春秋筆法やら司馬氏の権力やら先行史書の用語例などに加えて、史官としての倫理観も背負っていた)がんじがらめに「囚われていた」史官としての道里記事作法が理解いただけたでしょうか。別に、当時史官をしていたわけではないので、懸命に推定しましたが、当然、外していないと思います。(説明がくどくなって申し訳ない)

 くれぐれも、現代人の語感や地理観に囚われて、常識だとか論理だとかの「最終兵器」を持ち出してはいけないのです。互いに囚われているのですから、古代の囚われ人に対して、もっと謙虚に対応すべきです。(最終兵器は、議論が行き詰まったときの自爆発言、「ちゃぶ台返し」などの逃避策を言うのです)(説明がくどくなって申し訳ない)

*陳寿の海
 中原の教養人にして厳格な史官陳寿の脳裏には、現代の半島地図はないので、海は一つながりで島国を取り巻いていて海を自由に進めるという感覚はもとより無いのです。現代日本人との感覚の違いを掘り下げると、当時、海は塩辛い水を湛えた沼沢です。いや、中原に淡水湖はありふれていますが、西域で、塩っぱい西海や青海があることは知られていたのです。

 倭人に身近な東方では、海は、中原人には、対岸に渡る水たまりであって、船を進めることのできる「水」(大河)と認識されてなかったのです。つまり、渤海が南に狗邪韓国まで続く「大洋」との認識は全く無かったのです。(そのような記事は見当たりません)

 行程で狗邪の南は一つの海、對海の向こうは別の海、そして、一大の向こうはまた一つの海、総じて三つの海が並ぶ感覚です。そんなこと、わかっているとおっしゃる方には何も言い足すことはありませんが、よくわかっていない人のために何度めかの念押しです。

 当時の帯方郡官人や倭人に中原人の感覚は無く、眼前の海を認識して無造作に漕ぎ渡っていたでしょうが、中原史官陳寿は「大洋」を知らない中原教養人を第一の読者としているため、帯方郡官人や倭人の視点から書かれている記事を、何とかして、大切な読者に、抵抗なく理解されるように書かねばならなかったのです。

□提言感謝
 と言うことで、冒頭に引用した牧氏の提言に回帰するのです。(引用しなかった本論部分は、当記事では参照していないのです)(説明がくどくなって申し訳ない)

 私見では、牧氏の提言は、他の先賢の卓見とともに、政争めいた俗説の泥沼に埋もれてしまったようですが、先生の提言の精神は、大いに学ぶべきと考え、ここに後生の愚考を示したのです。(かねてから実践しているのは、当記事でも明白でしょう)(説明がくどくなって申し訳ない)

余言:わざわざまるごと引用したのは、この提言の意義を理解するには、読者自身が自分の眼で見て、読んで、理解したとき初めて、その意義が伝わる可能性があるという事から来ているのですが、どうも、こうした提言は、はなから無視する読者がいて、大いに歎くのです。さほど時代が異なっているわけでもないのに、先人の文意が理解できず、食わず嫌いで自分の偏見を醸したりするのは、つけるクスリが無いのかなと思わされるのです。いや、年寄りのらちもないグチです。

                     以上

*追記 2019/11/09
 以上、丁寧に初学者でもわかるように書いたつもりだったが、一部で、見当違いの読解をしている読者があるので、以下、再度説明する。まことに、他人の物の見方を正すのは、徒労ばかりで疲れる。(説明がくどくなって申し訳ない)

 当記事で、牧氏の提言を長々と忠実に引用したのは、それだけの意義かあるからである。
 氏は、古代史論の悪弊を憂慮して、資料解析(ことは、古代史文献のことだけを言っているのではない)にあたって、自分の狭い了見にだけ頼るのでなく、書き手の背景を念入りに調べて、使われている言葉の真意を探る度量が必要であると訓戒しているのであり、これも、子供に言い聞かせるようで、読者各位に失礼というか、恐縮なのだが、自分でこの原則をかねて信奉しているからお裾分けしているのであり、そうでなければ、当方は大嘘つきとなる。そんなに見くびられるようなものではないのである。(説明がくどくなって申し訳ない)

 と言うことで、倭人伝道里問題に関して、陳寿の使った言葉、表現の背景を広く調べて、丁寧に紹介しているのだが、読者が、自分に理解できないことは、はなから排除していると言明した上で、こ当人が理解した範囲で反論、攻撃しているのだから、始末に負えない。「馬念」である。(程度の低い意見の背景を探るほど、暇ではない。言わないと反論されそうなので、明記しておく。念のため)(説明がくどくなって申し訳ない)
 と言うようなことがあったのである。

 端的に言えば、たとえば、関白殿下は、「順海岸水行」ならぬ「循海岸水行」の意味を、根拠なしに誤解して力み返って論じているのだが、まあ、いくら、その解釈は独善、前車の轍ですよ、無批判に追従してはいけませんよ、と広く「情報発信」しても、読者の受信機が切れていては、無駄だと言うことである。かといって、こちらで読者の受信機を操作することはできないので、これまで通りに進めるしか無いのである。(説明がくどくなって申し訳ない)

 それにしても、殿下の「水行」の決め込みは、古田武彦氏の同部分行程開始部の論議と同様の早合点と頑迷さである。どうも、気質が通じている感じであるが、失礼だから、隠れ信奉者ではないかなどと決め付けはしない。(説明がくどくなって申し訳ない)

 以上、ぼやきで、お耳汚しであるが、暗黙の了解事項を表立って言っても、同時代の日本人が書いた記事の目の前の文字が読めない読者がいるということを承知して頂きたかっただけである。(説明がくどくなって申し訳ない)

 当論説は、「魏志倭人伝正解の条件」であり、趣旨は、引用部分であって、以下「本論」は、一つの実施例であるので、ここではこだわっていないのである。本論部分については、多々異論があるが、もはや事項、つまり、半世紀を経ていて、異論を唱えても聞き入れてもらうことはないので、あえて論じないのである。(説明がくどくなって申し訳ない)

                               追記完

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