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2019年12月 1日 (日)

今日の躓き石 毎日新聞の一大虚報 「漢字のルーツ」解明談 2/2

漢字のルーツ、金文は「筆文字」か 京都の美術館など、鋳造技法解明

 *私の見立て ★☆☆☆☆ 錯誤が大半の虚報     2019/12/01

*新規性の認知
 因みに、研究者は、「中国清代の学者、阮元(げんげん)が約200年前の文献で触れていた筆を使う手法に着目した」と明言し、研究の意義を適確に認識していると思われ、今回世に出てしまった記事暴走は、研究者の妄想が報道されたのではなくて、担当記者の読解力、理解力不足によると思われます。
 それが、かくの如く無様に露呈したのは、一つには、先に書いたような報道資料の公開、提供が無かったための誤解誘導と、新聞社編集部門の統率力不足が原因と思われます。担当記者が、ものを知らないそそっかしい性格でも、社内には、中国古代史に関して豊富な知識を備えた諸先輩が健在なはずであり、なぜ、独断でこのような間違った認識の下に、かくも粗雑な記事を書いたのが、世に出たのか、新聞社としての体制を疑うものです。

*筆が先か金文が先か
 もし、当時、筆書きが一切なかったとしたら、世に筆も墨もなく、筆書きに適した記録媒体もなく、金文工の創始した王室秘蔵の書法が、筆書きに適した媒体の開発として普及することはなかったとみるものです。
 特に専門家でなくても、一般読者はご承知のことと思いますが、筆と墨は、総合技術の精華であり、何もないところから即座に生まれるものではないのです。私見ながら、金文が、他の書記媒体に先行したという見方は、随分筋が悪いと見えます。
 いずれにしろ、どちらが先であったか、証拠はないのだから、少なくとも、軽々に金文筆書き先行を大発見のように言い立てるのは、学問の道でないように思うものです。研究者が、かくの如き虚報(フェイクニュース)に加担したとみられるのは、大変気の毒に感じます。

 以上、学問的な考え方について、素人なりの批判を加えたものです。

*成果の特定 (談話引用)
 東京国立博物館・富田淳学芸企画部長(中国書法史) 殷周時代の金文は書に携わる人にとってお手本とも言える文字。ただ、どのように製作したかは分からず、筆の使用は多数ある意見の一つに過ぎなかった。今回、実証的に筆で説明が付くと示したことは意義がある。この説が正しいとすれば、金文は筆の跡そのものが鋳込まれた、筆の魅力を十二分に表す書体と言えるのではないか。

 台湾中央研究院歴史語言研究所・内田純子副研究員(中国考古学) 中国青銅器の製作技法はホットな研究テーマの一つで、銘文の付け方は古今東西の学者が頭をひねって謎を解こうと挑んできた。研究グループは製作の痕跡を丁寧に観察し、鋳造実験を繰り返してこれぞという方法にたどり着いた。青銅器研究者を驚かせる成果だ。

 ここに、まことに適確な談話を紙面から引用したように、発表されたのは、「青銅器の製作技法」の細目であり、それは、高く評価されるべきです。この談話が、担当記者によって、どうして不届きな独断発表と誤解されたのか、大変不思議に思います。

 因みに、ここで言う伝統的な言い回しである「驚き」は、好ましいものであり、今日流布している「サプライズ」や「ショック」のように、原義で不快なものであるものを、勝手に誤解して無神経に採り入れたものではないことは、念を押すまでは言うまでもないでしょう。

 言うまでもありませんが、漢字の起源は、甲骨文字の甲骨への書き込みであり、筆文字の起源は、それを「紙面」に表現する書法であったはずです。

*報道の暴走の戒め
 と言うことで、本記事で、見出しを含めて、毎日新聞が読者に提供したのは、早とちりの誤解であり、俗に「ガセ」と言われるフェイクニュース、虚報かと思わされます。玄人向けの地味な話題を一面トップ大見出しにしたのには、そうした疑念が漂うのです。
 結局、毎日新聞にとって、夕刊紙面は、実験の場になっているのではありませんか。「フェイクニュース」でしょうが、独善、独断でしょうが、生煮えを構わず紙面に出してしまうと言うことではないのですか。
 毎日新聞社の全国紙としての見識はどうなっているのでしょうか。夕刊一面大見出し記事であるから、全社の信用をなくす物になっているとは思わないのでしょうか。
 これなら、個人ブログと大して変わらない空騒ぎであり、夕刊はこの程度という姿勢と見えます。これなら、毎日新聞に夕刊は不要と思えてきます。

以上

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