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2019年12月22日 (日)

今日の躓き石 NHKBSが盗用したドイルの「ロストワールド」~無視された創造者の功績

                         2019/12/22

 今回の題材としたのは、NHKBSの下記ドキュメンタリー番組である。

 体感!グレートネイチャー「風の絶景!天空のジャングル~モザンビーク~」
 2019年12月21日(土) 午後10時00分(90分)

 *冒頭三十分が未視聴であることをおことわりしておく。

 いや、番組自体を批判するとしても、大規模な取材と見事な集中力で、受信料に見合う以上の価値を感じさせてくれた名番組であるが、実に不可解なのが、54分あたりから開始する「天空のジャングル 断崖上のロストワールド」なる部分の「ロストワールド」と言う言葉の扱いである。
 英語としてみると、この場合のLost Worldは、意味の取りにくいなじみにくい感じがある。それは、Lostというものの、実際はずっと存在していたのであり、見失われていた、と言うか、全く知られていなかったに過ぎないからである。
 良く言われる「失われた大陸」は、かって存在したが現在は存在しないという意味で、失われた世界と言われても納得できるのである。
 番組で紹介されたような、世界から切り離されて見失われていた小宇宙を「ロストワールド」と呼ぶなら、視聴者に対して、ちゃんとした説明がいるのである。

 いや、そんなつまらない当てこすりを言わせるのは、断崖上で孤立した世界に前世紀の恐竜が生存しているという「ロストワールド」像は、探偵小説分野を確立した名探偵シャーロックホームズの創造者である、サー・アーサー・コナン・ドイルが世界に先駆けて冒険物語とした架空世界であり、その世界を形容する言葉として、特に創造した著作物であるということを、実は関係者が知っていてそのように意味を取っているのに、視聴者は無視されているからである。
 サー・アーサーは、SFや映画で恐竜が現代に登場する理屈を与えた最大の功労者であり、その意味では、大いに追従者を従えた創造主なのである。しかるべき敬意を払うべきではないか。

 いや、当方は、番組冒頭の三十分を見過ごしたので、その部分でたっぷり紹介されているかも知れないが、モザンビークの絶景を個別に紹介している構成上、当絶景はここで初登場している。そして、生態学者の発言として「ロストワールド」なる言葉が頻発されるこの場所では、正体不明の恐竜世界イラストが作者付きで引用されて、普通の用語として勿体ぶって紹介されているだけで、そのような理解の根拠となっている著作物紹介がなかったから、その点を問題と言っているのである。単なる番組構成の不手際かも知れないが、NHKが、そのような子供じみた間違いはしていないと思うので、以上のように、著作権的な不備を言うのである。

 NHKは、何かドイル氏に恨みでもあって黙殺したのだろうか。大変な問題である。確かに当著作の著作権は切れているが、だからといって、勝手に、当番組の創作した概念の如く、無造作に使用することは大問題である。下世話に言う「パクリ」である。そして、NHKは、公共放送として、視聴者にドイルの名作「ロストワールド」に関して、大変誤った印象をまき散らしたことの「恥」を知るべきである。

 それにしても、番組制作者一同の誰一人として、先人の著作物の功績を公然と無視する愚行に気づかず、あるいは、気づいても、視聴者に知らせないとする悪行を犯しては、全員一致の組織的犯罪行為ではないかと思わされるのである。

 折角の好番組が、NHKの恥を全世界にさらしたのに気づいて、是正していただければ、一視聴者として、一国民として大変幸いである。

以上

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