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2020年1月23日 (木)

新・私の本棚 中島 信文 「古代中国漢字が解く日本古代史の虚偽と真実」3/3

 本の研究社 2019年12月初版 アマゾンオンデマンド書籍

*「海」談義
 中島氏の語法で感心しないは、海談義の「シーとオーシャン」のカタカナ語です。漢字の字義動揺を懸念したのでしょうが、カタカナ語は、学校の英語の時間では習わないので、正しく原語で「Sea、Ocean」でないと、英語の語義が継承されず無意味です。シーはSheと聞こえて厄介です。

 なお、「海」の世界観は、安本氏著書書評の「大海談義」を自己引用で再録します。文脈が違うので多少不整合ですがご容赦ください。

*大海談義 隔世の世界観 ~引用開始(改訂あり)
 以下、先学諸兄には、常識のことばかりでしょうが、当ブログの読者には未知の領域の方もあると思うので、ご容赦ください。

 (先だって言った)隔世の世界観というのは、三世紀の中原人、倭人、後世奈良人は、世界の認識が異なるから、同じ言葉を書いても表現した意義は、随分異なるというものです。現代日本人の「常識」で字面を判読したのでは誤解も避けられないでしょう。

 例えば、同時代の夷蕃伝「魏略西戎伝」では西域万里の「大海」はカスビ海であり、総じて「海」は英語でPond, Lakeつまり内陸水面とわかります。後世西域伝では、カスピ海を単に「西海」と称している例が見られます。これは、中原概念であり、これに対して、大海は、現地、つまり、安息概念と思われます。

 いや、現代の英米人は、両国間の大洋AtlantisをPond水たまりと呼びます。「古池」をジェット機で飛び越す感覚なのでしょう。それ以前、英語では、伝統的にブリテン島の周囲の海をSeaと呼ぶものの、米国東部人は、米語では、目前の海を、まずはOceanと呼んだのです。後に西海岸の向こうの大洋を知ってAtlantis, Pacificと呼び分けたのです。

 ざっと走り読みしただけでも、随分「海」の意義が異なるのです。

*認識の限界 地平線/水平線効果
 もちろん、倭人伝の「海」、「大海」の認識は不明ですが、例えば、帯方人や倭人が南方太平洋、南シナ海を認識していた証拠はないと思われます。

 倭人伝の「大海」は、当時の中原人世界観に従うと、精々黄海でしょう。

 倭人まで普通里萬二千里の解釈が出回っていますが、東夷が、広大な世界観を持っていた証拠は無いのです。後世人が、色々推定しますが、何も書いていないのです。世界観、地理認識が異なれば、言葉の意味は異なるのです。

 いや、奈良人が、内海から隔絶した地平線/水平線のない奈良盆地で「大海」をどう認識したか、知ることはできません。「まほろば」は、住民の先祖が流亡の果てに安着した陸封安住の境地と見えるからです。

 いや、時代人の本心は、当人に訊かねば分かりません。「グローバル」な視野に囚われた後世人が、倭人の世界観に同化するには、精緻広範な地球儀(グローブ Globe)を棄て同じ井戸に入ることです。

 古代奈良平野は湖水を有し、『対岸は見通せても「海」』との見立て海洋観が存在した「かも知れない」。そうした時代地理環境も影響するのです。

*魚豢の慨嘆
 倭人伝最後に付注された魏略西戎伝には「議」が記され、魚豢は、自分を含め万人は自身の井戸の時空に囚われた蛙との趣旨で慨嘆しています。西域万里を実見できず前世の他人の見聞録に頼るもどかしさを感じたのでしょう。
~引用終了

*まとめ
 ということで、中島氏の基本姿勢には全面的に同意していますが、満点になってないのは、人に完璧はないし、氏に追従は必要ないと思うからです。

                                 完

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