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2020年3月25日 (水)

04. 始度一海 - 読み過ごされた初めての海越え 追記版 

 倭人伝再訪-4  2014-04-24
  追記:2020/03/25  

始度一海、千餘里至對海國
 受け売りですが、「水行」が河川航行との説の続きとして、「始度一海」についても、中島氏の論に従い、ここは、始めて(始度)の渡(度)海であるとの意味と読めます。

 これまで、對海國は、不足する食糧を交易で補うとの記事に対して、交易では何か代償が必要なのに書かれていないと不満を呈していましたが、どうも、この下りは、魏使に見落としがあったようです。

 人は、食べなければ生存できないので、穀類不足は、海や山の幸で補い、さらには、山や海の幸を送り出して、代わりに穀類を手に入れて飢餓を免れたのが、交易の実態であったと思われます。
 本当に、飢餓状態になれば、半島か一大国に逃げ出すはずですが、そのようなことが示唆されていない以上、対馬島内で、必要な食料は得られていたのでしょう。

 海産物の干物づくりには、一旦煮てから天日干しする必要がありますが、その程度の燃料は、山林から得ていたのでしょうし、必要な食塩も、海水から採れたはずです。
 ただし、対馬で、貝塚が出土したかどうかは定かではないので、貝類は別としても、干物交易は、あくまで、仮説に過ぎないのですが。

 ちなみに、さすがの魏使も、海上航路を精度高く測量することはできないし、また、航海の距離を報告しても、道里としての実際的な意味が乏しいので、方向と距離は、大雑把なものにとどまっているのです。

以上

追記:2020/03/25
 現時点で、訂正を要するというほどではないのですが、思いが至らなかった点を補充します。

 まず、「一海」を渡るとしていて、以下でも、「また」と言う言い方をしていますが、これは、山国蜀の出身である史官陳寿が、帯方郡から報告された行程を、海を知らない中原、洛陽の読者に理解しやすいように、半島南岸の狗邪韓国から対馬への移動を、中原にもある大河の渡河、渡し舟になぞらえたもののように見えます。

 中原人にとって、辺境の「大海」は、西域の蒲昌海(ロプノール)や更に西の裏海(カスビ海)のような塩水湖なので、混同されないように、言い方を選んでいるのです。

 また、今日の言い方で綴ると、対馬海峡は、東シナ海と日本海の間の「海峡」、つまり、山中の峡谷のような急流となりますが、当時、東シナ海も日本海も認識されていなかったので、単に、一つの名も無い湖水があってそれを、土地の渡し舟で越えるとしているのです。
 予告すると、次の湖水は、特に「翰海」との名があるとされていて、別の土地の渡し舟で越えるとしているのです。そして、次は、また無名の湖水となっていて、別の土地の渡し舟で越えるとしているのです。

 渡し舟は、基本的に、身軽な小舟であって、決まった「津」と「津」の間を往き来して街道を繋ぐ補助的な輸送手段です。中原の街道制度でも、道里や日数の勘定に含まないものです。
 倭人伝の渡し舟は、流れの速い海を長丁場で乗り切るので、倭人伝は「渡海」と呼びつつ、水行として道里や日数の勘定に含んでいます。陳寿は、それまでの「慣用的な用語、概念を踏まえて、辺境の行程を説いている」のですから、後世の読者は、「現代人の持つ豊富な知識と普通の素直な理解」を脇に置いて、歴史的な、つまり、当時の慣用的な用語、概念によって理解することが求められているのです。

 倭人伝は、そのように三つのささやかな「湖水」を、それぞれ、土地の渡し舟で渡って乗り切るとしています。行程全体の中で、難所であることは違いないのですが、普段から渡し舟が往き来しているとして、物々しい印象を避けたとも言えます。

 と言うことで、この間を、魏使の仕立てた御用船が、島廻遊までして次々に、島伝いに末羅国まで渡るという、古田武彦氏に代表される学会ぐるみの物々しい想定は、陳寿が丁寧に噛み砕いた原記事の、時代相応の順当な解釈を外れていると見るものです。

以上

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