新・私の本棚 番外 NHKスペシャル よみがえる邪馬台国 全三回 4/5
番組放送年 1989年 2019/01/27 補充 2020/03/11
〇第三回 検証・卑弥呼の都
*躓く「枕」
この回は、九州説を支持していた門脇禎二氏と畿内説を支持していた坪井清足氏の談話を枕に開始します。
本篇の冒頭、いきなり誤解が露呈していて、「楽浪郡」が語られています。当番組では伏せられていた後漢書を見てしまったのでしょう。
行程記事をそのまま読むと、と言う語りは説明不足で軽率です。読解できずにベタに書き出すと、と言うべきです。当時の公文書ですから、倭人伝の語法を理解すれば、明快に読み解けるはずです。過去、諸先賢が理解できないから、自分自分の語法で勝手に書き替えて来たものです。
*両説並走
坪井氏は、畿内説は「考古学の所見」に依存すると正直に解説しています。
門脇氏は九州説に転じて変節漢と顰蹙を買ったと述解しますが、畿内説では六、七世紀の統一国家形成まで長期を要したことを説明できないと感じたようです。我が意を得たのですが、畿内陣営から回答がないようです。古代史学界には、顰蹙だけあって、学術的な論争は成立しないのでしょうか。
坪井氏は、「考古学の所見」では、三世紀遺物出土が乏しい九州説に不利としますが、遺物年代はあくまで推定で、決定打でないと想われます。
また、氏は、行程末尾の「水行十日、陸行一月」は投馬国から南に王都行きでは南方に突き抜けるから、これは、東方畿内だと押していますが、伝統的な我流解釈に依存していて異論必至で、決定打ではないのです。
氏の言う「考古学の所見」は、専門外とは言え、軽率な文献解釈を丸呑みして根拠としているのであれば、是非再考いただきたいものです。
*鬼(神)道とシャーマン
ハン氏(韓国国立中央博物館館長)は、鬼道(「鬼神道」は後漢書)を論じて、今日で言う「シャーマン」とも思われるが、「シャーマン」は地域ごとに異なるので一概に論じるべきでない、と卓見を述べて、「シャーマン」が古代に生きていたような時代倒錯の戯れ言をきつくたしなめています。
*即刻参詣の檄
終盤になって、坪井氏は、倭人が大陸の情報を承知していて、使節を適確に派遣したと驚いています。伝統的に、女王を神がかった諜報通と見ているようですが、ことはそんなに超絶的な成り行きでなかったでしょう。
公孫氏傘下から魏帝直轄に代わった帯方郡の新任太守から、専用文書便が街道を駈け、即刻出頭の厳命が届いたと見るのが順当ではないでしょうか。
即刻と言っても、測定済みの往復所要期間、つまり、片道、「水行十日、陸行一月」を四十日と見て、往復八十日を前提として出頭期限を切ってあり、遅参すれば討伐すると断言したでしょうから、大陸(遼東)事情を知らなくても、降って湧いた指示でも、国王以下打ち揃って恐懼して、取るものも取りあえず、身軽な使節を送り出したのでしょう。
*遠すぎる畿内
余談ですが、この日数では畿内に辿り着かないので、日数稼ぎに苦労しているようですが、それでは、郡は、所要期間を知らなかったことになります。
倭人伝の景初二年に横線を足して、景初三年に日延べしても、使節は郡に辿り着けないでしょう。まして、韓国海岸を「水行」したら、景初年間には着かないでしょう。遠隔の畿内で半島情勢を察知というのも神がかりです。
未完
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