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2020年4月 4日 (土)

新・私の本棚 季刊邪馬台国137号...糸高歴史部座談会 1/1

【総力特集】邪馬台国論争最前線 四十周年記念エッセイ 糸高歴史部座談会                               2019年12月刊

 私の見立て ★★☆☆☆ 地図も道標の無い荒れ地に迷う図                 2020/04/04

〇始めに
 この「エッセイ」は、見た通り、現役高校生の歴史認識を語るものなので、ことさら書評に載せるべきではないかも知れませんが、一応、同誌の編集部が、他の四十周年記念「エッセイ」と並載したので一人前に批評しているものです。

▄総評
 本稿を含め、世間一般に少なからず誤解がありますが、「エッセイ」は、本来、形式等を厳しく拘束しないものの、あくまで「小論文」であり、論文の諸要件が求められるのです。

 掲載された座談録は、見るからに「雑感」であり「エッセイ」には不適格ですが、今回の誌面は、編集部の俗な見解が反映していて大変残念です。

*開会宣言の不具合
 それはさておき、そのような苦言が飛び出すのは、劈頭の発言のせいです。ただし、これは「史実」でなく「創作」と思われますが、もちろん、そのような演出自体は、むしろ当然のたしなみであり、出席者全員の合意の元に「座談会」議事録の切り出しに、特に選ばれたようですが、それはそれとしても余りに無造作であり、連歌の発句としても大変不出来で、読み進む意欲をそがれます。

*根拠無き風説の弊害
 この発言は、『「魏志倭人伝」の文章が間違っている』と言う、言うならば、まことに無責任極まりない風説を前提としているようですが、根拠はなく検証もないのでは、野次馬の無責任な放言の伝言と同様な風評拡大手口です。

 おそらく、「倭人伝に書かれている方位や里程が、大きく間違っている」という趣旨でしょうが、論考とするには、事実かどうかの検証が最優先です。特に、何に対して間違っているのか、どうして間違っているとわかるのか、と言う掘り下げを経て、初めて、一つの意見として生き残れるものなのです。それがないと、単に悪質な風説であり、「作業仮説」、つまり、検証に値する、意味のある意見とはならないのです。

*根拠の無い論議
 以下の意見は、この発言を冒頭に担いで、以下、無批判で進めていますから、それだけで全ての記事が無効と見なされます。つまり、発句の不作が、記事全体を損ない、糸高歴史部の評価を地に落としているのです。

*編集部の児戯
 それにしても、同誌編集部は、寄稿者の玉稿を押し頂くだけで、基本的な査読をしていないのは、まるで、子供銀行であり、寄稿者に気の毒です。

*風説紹介の意義
 本号が掲げる『「邪馬台国論争」の最前線』が風説に基づく印象論とは、高校生の現在の認識として、痛切なものがあると思います。

 何よりも惜しいのは、相談する相手を間違えたということです。

 俗説の無批判追従は、いまどきの歴史論の流行りですが、ここで批判したのは、議論手続きの不備であって議論内容でなく、まして、論者の人格をそしるものではないと理解いただきたいのです。

 何の議論にしろ、事情に通じていない人間が、何百人集まって議論しても、一向に議論にならないのです。

〇結論
 このような風説が無造作に取り上げられているのは、多くの方がそう思い込んで口にしているという嘆かわしい風潮の表れであり、そのような風説を言い出して、さらには増殖させる方が少なからずいるということでもあります。もちろん当の高校生に責任は無いのです。
 視点を変えると、本稿が、諸賢の「エッセイ」と席を同じくして掲載されているということは、「邪馬台国論争」に論争がないとの証拠にもなるのです。

                                以上

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