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2020年6月24日 (水)

今日の躓き石「纏向遺跡の種 年代測定を巡って」揺らぐ毎日新聞古代史報道の良識 1/3

                              2018/05/28  補充2020/06/24
 今回の題材は、毎日新聞夕刊、文化面のTopicsコラムである。
*勘違いの露呈
 それにしても、「100年の幅 いかに限定」とは、担当記者の大きな勘違いを衆目にさらけ出している。以下、どこが勘違いか、丁寧に指摘した。

*公表原則の乱れ
 因みに、「纒向学研究センターが14日に公表した放射性炭素(C14)年代測定の結果」とあるが、同センターのサイトに、そのような公表を行ったという記事は公開されていない。

 5-16のお知らせとして、研究紀要第6号が刊行物案内に記載されただけであり、5-28現在、5-16当時未公開だったPDFデータが公開されているというものの、平成30年3月10日付けの序文、3月30日付の奥付けを見る限り、5月14日に公開されたという裏付けは見つからない。どうやら、記者会見の場で各社に公開されたものでもなく、資料配付したものでもなく、特定の新聞社の担当記者に対して『発表』したようである。通常、報道機関向けの公式史料が「プレスレリース」として公開されるが、そのような公開史料は見当たらない。
 つまり、伝えられているのは、担当記者の所感であって、公式発表内容をどの程度正確に報道しているのか、読者には知りようがない。とても、学術分野の記事とは思えない。
 このような報道は、全国紙の記事として不正確ではないか。

*考古学者による酷評
 先ずは、本件に関して、考古学者から、持論の強化に役に立たない、つまらない科学的見解だと、酷評されている。つまり、費用の無駄遣いという趣旨のようである。
 しかし、考古学者に酷評されているとは言え、自然科学者が、物理現象を厳密に考察した結論であり、「自然科学は、考古学に隷従するものではない」と言う至極当然の真理を示したものであるから、担当記者にこの研究成果は高く評価すべきだという視点が欠けているのは、大人げないものである。

*自然科学者の使命
 自然科学者は、背後で責めつける外野の声に指図されているのではなく、目前の科学的事実に忠実であることが示されたのは、科学者全般にとって、大変好ましいものであったと考える。

 斯界の権威者から、「時期をもっと限定せねば意味がない」と専門分野の科学者としての生存を脅かされても、研究費のスポンサーの言いなりになってルールに外れた危険なブレーはしてはならないのである。いや、当然のことを言い立てて恐縮であるが、全国紙記者が、偏った視点で記事を書いているので、つい批判してしまったのである。

*乱調の紹介
 続いて、担当記者の意見らしいものが展開されるが、C14年代測定に関する手短な紹介は、「フェイク」では無いもののボロが目立つ。記者は、なぜこれほど幅が出たのかと、考古学者の非難口調に押されて、「不当に」詰問したのである。

*科学的紹介の試み
 関係者には衆知なので、念押しされていないのだろうが、C14は、二酸化炭素として大気中を浮遊している炭素に一定量含まれている放射性同位元素である。
 他の同位元素の大半、ほぼ全てが永劫不滅なのに対して、C14は、5,730年を半減期として崩壊していくものであり、大変緩やかに窒素(N14)に変化して減少していくことは、不変の真理である。
 減少は、数学的な指数関数なので、秒単位どころか、1/1000秒単位で、小数点下、100桁でも1000桁でも正確に計算できる。ここには、一切不確かさはない。

*測定の不確かさ
 年代測定で初めて発生する不確かさは、標本の化学分析であるが、測定値自体は、ほとんど不確かさを考える必要のないほど細かく計算できる。

 不確かさが生まれるのは、標本毎の違い、標本内の場所による違いであり、限られた場所に密集していた状態から見て、大きな不確かさはないはずである。
                     未完

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