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2020年6月 5日 (金)

私の本棚 21 完全図解 邪馬台国と卑弥呼 2015 その1 序論

 別冊宝島2244 宝島社                  2014年11月発行
 私の見立て★☆☆☆☆ 乱雑、粗雑な寄せ集め資料  2015/06/18 追記 2020/06/05 2025/02/22

*加筆再掲の弁
 最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。

〇序論
*口語訳の動員

 本書は、前書きで、「邪馬台国論争の原点」とすると編纂の方針を掲げ、『三国志』「魏志」「倭人伝」の「口語訳」として、亡き池田仁三氏の訳文を掲載している。なお、「魏志倭人伝」自体は、著作権の消滅した公有著作物であるが、現代語訳は翻訳者の「著作物」であり、ここでは、出典を明記した上で、引用、紹介しているので、適法な引用かな、と言うだけである。
 ただし、中国語史料の論議であるから「口語訳」と書くと、それは、古代中国語の「口語」と理解されるのではないかと懸念されるのである。もっと、慎重に言葉を選んで欲しいものである。

 ということだけでもないのだが、「邪馬台国論争の原点として資料提供する」と言う本書編集方針は、その第一歩で脱線している。原点が、すでに原典資料から、大きく食みだしているのである。

 表紙裏に「南至邪馬壹国」から「七萬餘戸」の部分の「口語訳」の抜き書きが掲示されていて、重ねて不吉な徴となっている。
 口語訳と書いているのは、いわゆる、漢文書き下し文が文語調で読み解きにくいので、そうではなく、普通、現代の日本で読み書きしている文章にしていると言うことだろう。別に、出回っている「若者言葉」にしているのではないのであろう。ただし、ここで問題になるのは魏志倭人伝」の「原文」(紹凞本準拠と思われる。以下、単に原文という)の「口語訳」の際に、かなりの書き足し、読み替えが加えられていると言うことである。つまり、本書で展開されているのは、池田氏の著作に基づく論議であり、原資料に基づいているとは言い切れないのである。

 例えば、「不弥国の南方向に行けば邪馬台国に着きます」と書き切っているが、原文には「不弥国の」はないし、毎度おなじみであるが、「邪馬台国」もない。申し訳ないが、ついていけない。

*超絶読解
 史料翻訳の際に、自分の観念で書き換えるのであれば、書き換えた部分を明記すべきであり、またその根拠を示すべきと思われる。ここに掲載されているのは、注記の無い「べた書き」なので、口語訳でなく「超訳」と言うべき現代著作物となっているように見える、と言ってしまうと、故人に対して過酷な言い方になってしまう。

 察するに、池田氏ご本人の意思は、自分なりの読み解きを試行しただけであって、学術的な資料として細部に至るまで厳密さを要求される、いわば、測定原器として完成したものと主張したものではないと思うのである。こうした利用は、当人にとって本意でないように思うので、著作権の中でも、著作人格権が侵害されているように思う。

 その辺りは、従って、以下の批判の口調から割り引いていただきたいのだが、当方としては、編者から、「百年論争」にとどめを刺す新原典資料として提案されたものとして、批判を加えるしかないのである。くれぐれも、その辺りの情状を酌量頂きたい。

 また、当ブログの古代学論の全体を通じて言えることでもあるが、以下は、私見でしかない。

*多難な前途
 簡にして要を得た「魏志倭人伝」の原文は、決して、現代(日本)人が容易に趣旨を読み取れるものではないが、当方は一介の素人なので、一部独善論者が言うように、「三国志」全体を読破理解しないと、的確な理解ができないと言い放つつもりはなく、先人の偉業をなぞりつつ、一方で原文の字面を、懸命に追いかけていくのである。

 ただし、現代人の俗な世界観(「世界」をどう見ているかという意味である)を離れて、陳壽の世界観に馴染まないと、理解を誤ることが多い。そこは、先人の偉業に示された足跡を見て陳腐な落とし穴を避けることである。

 そのためには、十分注意して、絶えず、推定が妥当かどうかを自問自答することであり、そのように沈着であれば、躓き石は、残さず避けられると思う。

未完

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