私の本棚 22 完全図解 邪馬台国と卑弥呼 2015 その2 口語訳
別冊宝島2244 宝島社 2014年11月発行
私の見立て★☆☆☆☆ 乱雑、粗雑な寄せ集め資料 2015/06/18 追記 2020/06/05
*倭人在
さて、一例として、書き出しはどう訳されているか読んでみる。
1.「山に囲まれ島を連ねて国を作っています」
と口語訳は滔々と述べているが、そのような言葉は原文にはない。
*口語訳という名の創作
口語訳を書き出した前提として、翻訳者は、ここに日本列島の姿が描かれていると見たかったとも思えるが、「倭人」、ないしは「倭国」がそのような広がりを持っているとは原文には書かれていない。
原文は、「倭人在帯方東南」と書き出していて、これは 「倭人は、帯方東南に在る」と簡潔かつ明解に言い切っているとみられる。
その意味では、「倭人」ないしは「倭国」の所在は、後に言う「九州島」(の北の方)だけが想定されているのである。「北九州」と言いたいところだが、それでは、「北九州市」と紛らわしいので、普通は避けられている。古代地名の「筑紫」と言いたいところであるが、どうも、一部で嫌われているようで、定着していない。困ったものである。
*いきなり脱輪
論者によっては、原文に書かれている内容を認識した上で、「実際には日本列島が連なっているのだから、そのように読み替える」と論拠を示して読み替えている例もある。いきなり、史料改竄である。同時代最有力の史料を、誇示船的な感慨で書き替えるのは、「蛮勇」と言いたくなるような、大した度胸と言える。このあたりが、「言ったもの勝ち」の乱雑論議と言われる原因である。
しかし、ここで「倭人在」と言うのは、地図上の「海中山島」の配置を言うものではなく、「倭人」ないしは「倭国」の所在を言うのである。してみると、「実際に」というものの、自身の個人的な定見以外に根拠は特にないはずである。定見は、論者自身が編み出すものではなく、原文から読み取るべきものである。
論者の個人的な定見を元に史料を読み替えるのは本末転倒であり、行きすぎた解釈というものであろう。
10. 「不弥国から邪馬台国へは」
前記事で書いたように、ここでは原文に無い記述を当然の如く書き足している。
*道標を外された分かれ道
また、「水行十日陸行一月」は、不弥国から邪馬台国への行程として書き出している。行程記事解釈で、多くの論者が選択している読み方であり、その解釈の上に、膨大な論考が繰り返され、高々と積層しているので、この読み方に固執している例も少なくないように見る。
これに対して、本書18ページでは、「水行十日陸行一月」は、不弥国から邪馬台国への行程でなく、「帯方郡から邪馬台国までの距離と日数が示されている」と書いている。
解釈として、一考に値する筋の通ったもののように思えるが、この読み方が世に出て久しいのに、頑として見向きもしない、一顧だにしない論者が少なくないようである。
と言う事で、両論は、並立しているとの説明のないまま、併存しているのである。誠に、乱雑である。
*手遅れの忠言
今回の記事に限らず、百年論争の果てに見えている事象を当ブログで言い立てる原因は、原点から脱線して走り始めて、そのまま迷走し続けている議論が多いと言うことである。不毛などと言うものではない。
と言っても、一介の私人が私見を述べても、各論者の耳には届かないのだろうが、例えて遅れでも、ここで言うしかないのである。。
未完
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