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2020年6月 5日 (金)

私の本棚 23 完全図解 邪馬台国と卑弥呼 2015 その3 誤り?

   別冊宝島2244 宝島社                      2014年11月発行

 私の見立て★☆☆☆☆ 乱雑、粗雑な寄せ集め資料    2015/06/18  追記 2020/06/05

 ここで一旦、口語訳の検討を離れて、本書の内容に触れる。

*史料の乏しさ
 本書18ページは、冒頭から不穏である。

 堂々と「魏志倭人伝の記述は誤り?」とスポーツ新聞の見出し風に吠えているが、本書に登場する各論者それぞれが、長年の模索を通じてものにした、ある意味、個性豊か、かつ、不正確な解釈をしているものであり、各論者は、魏志倭人伝の書かれている記事ではなく、自身の解釈を元にして激論しているのである。いわば、論争の種を地産地消しているのである。

 この部分の筆者が論じているのは、原史料の不備なのか、各論者が感じた不備なのか、趣旨が不明確である。
 邪馬台国論争は、論争と言いつつ一向に正否が示されず、収束しないのであるが、断片的な議論が迷走するだけで収束しないのは、無理からぬ所である。

 続いて、「邪馬台国や卑弥呼に関する歴史的史料の乏しさ」と書いているが、ことの実体は、「乏しさ」などと、お上品にぼやかして言うべき状態ではないのである。

 史料として信ずるに足りる資料は、何より魏志であり、以下、おおむね魏志の引用で書かれた後漢書かあるだけであって、本質的に、信ずるに足りる史料は魏志一件しかないのである。
 記事も認めているように、該当する時代に関して記述していると思われる国内史料には「邪馬台国や卑弥呼」は登場しない。まことに、へんてこな話ではなかろうか。

*誤解・誤読の海
 続いて、『「邪馬台国」が史書に初めて登場したのは、3世紀末の魏志倭人伝と漢書地理志』とあるが、漢書地理志は、後漢時代に編纂されたのであり、3世紀末と言うと随分時点がずれている。また漢書地理志には、当然「邪馬台国」とは書かれていない。それとも、何か異本を見ているのだろうか。

 と言う事で、何のことが意味不明である。誤字、誤記の類いで起きる間違いではなく、コピペ操作の失敗であろうか。ちゃんと、自分で推敲すべきである。(魏志倭人伝に「邪馬台国」と書かれていないという、まことに当然の指摘は、ここでは差し控える)

 素人考えで失礼かも知れないが、これは「史実認定」が不正確といいたいところである。

 誰がどうと言うほど限定された話ではないが、編者は、各自の見解をつきあわせて議論したいと言うが、それ以前に、勘違いや書き違いを前提に持論を構築しているのであれば、各論者の見解の相違をつきあわせて、正否を吟味することはできないのである。

未完

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