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2020年6月24日 (水)

私の本棚 大庭脩 親魏倭王 2/6

 学生社 2001年9月 増訂初版           2018/05/26 補充再公開 2020/06/24

*倭人伝知らずの倭人伝批判
 どうも、著者は、三国志現存史料のうちで、南宋時代の紹興本と呼ばれる版を利用しているようだが、もう一つの有力な版である紹凞本では、わざわざ「倭人伝」と小見出しを置いて区分を示し、続いて、新たな部分として「倭人伝」記事を書いているので、魏書第三十巻に併合されているものの、この部分は、事実上、「倭人伝」なる書物として取り扱われていると見えるのである。

*なじまない東アジア
 続いて、著者の用語に不満なのは、多分、学会用語として通用しているものと思うのだが「東アジア」なる現代語が使用されていることである。他の古代史書でも見かけるから、学会基準かも知れないが、素人目には、異議が感じられる。

 「東アジア」というからには、古代に「アジア」全域の地理の知識があって、そのうち、一部分を「東アジア」と呼ぶという前提だと思うのだが、何も定義されずに登場するので、大変居心地が悪い。やはり、古代史論で、意味の明確でないカタカナ語は避けたいものである。

 実際、三世紀当時の東地中海、つまり、ギリシャの視点では、お膝元の地元がヨーロッパであり、エーゲ海を隔てた対岸、今日言う小アジアの地域が「アジア」だったから、中国東部と朝鮮半島を中心とした地域とは、何の関連もないのである。要は、良くある「時代錯誤」であり、丁寧に説明して使わなければ、一般人に「ウソ」を押しつけていることになると思うのである。

 と言うものの、著者が、当時の倭だけをとらえるのでなく、倭を中心として地域を包含して捉える視点は、大変貴重なものがある。特に、倭から西北に遼東に到る直線的な経路だけでなく、帯方郡、遼東郡と青州、山東半島との連携を見出して、渤海湾を囲む環渤海圏の「地中海」的交流を描くのは、大変ありがたい。

 つまり、著者は、広大な地域を示す「東アジア」と言うが、実際意義があるのは、環渤海圏+朝鮮半島、倭という、限定された世界であり、当時の人々にとっては、それが、辛うじて認識可能、到達可能な範囲と思うのである。当時の倭、韓、帯方世界が認識していない「東アジア」は、無用のように思う。

 いや、帝都の史官は、東西全ての地域を、地理志によって把握していたかも知れないが、ここでは、東夷諸國とそれを束ねていた楽浪/帯方の両郡など、倭人伝編纂に関わった人々の意識を言うのである。倭人伝は、倭人伝の元史料を書き留めた人々の世界観で書かれているのである。

*邪馬台国の国際関係
 現代感覚で「国際」なる小見出しを付けているが、実際、国としての構造を保っていたのは、せいぜい、後の魏・呉・蜀三国であり、遼東の公孫氏政権は、国と称したものの、国家としての体裁を成していなかったと思われる。
 東夷伝諸國、特に、細分化された「小国」は、単なる「蛮夷」の集落であり、言葉に基づく文化を「中国」と共有していないから、「国際関係」は持てなかったと見るのである。

 時代相応の言葉を選ぶと「漢蕃」関係である。蕃にしても、漢、つまり、中国の大帝国を、自分たちの同類と見たのは「夜郎」のようなお山の大将なのである。「邪馬台国」は、仲間内では、対象扱いされていたかも知れないが、漢を相手に背比べを挑むような意識はもなかったと見るべきではないか。

 倭人伝談義に後世用語を無批判につなぎ込むと、一般読者に誤解を押しつけることになると思うのである。

*諸国状勢

 以下、著者は、後漢末期から、三国時代の中国及び東夷の状勢を描いていて、貴重である。とかく、国内古代史論者は、後漢桓帝、霊帝の治世と無造作に言うが、両帝期は、いわば、後漢朝衰亡(衰退・滅亡)期であることを理解しているかどうか不明なのである。

                      未完

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