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2020年6月 5日 (金)

陳壽(中国史)小論- 8 (2013) 牛馬

                             2013/09/22  追記 2020/06/05
〇牛馬考
 陳壽の面白みについて、次の例を挙げます。どうも、今回は読書感想文になりそうです。

 魏志倭人傳には、この国に牛馬がいないと書かれています。

 しかし、倭国の数万戸を有する大国は、結構大きな農業国家なのに、牛馬の助けがなくて国が成り立つのでしょうか。

 あるいは、魏使が大挙到着して、大量の下賜物を運搬するのに、牛馬がつかえないとは、信じがたいものがあります。銅鏡100枚と言えば、頑丈に木箱梱包して総重量100kgを超えるはずです。移動経路には、山道も石ころ道もあるだろうに、担いで移動するのは至難と思います。

 それにしても、山道の徒歩行らしい記述はあるものの、使節団の移動が全行程徒歩とすると大変なものです。

*肉食論
 こうした食料の乏しい時代に、肉食のために穀物系飼料で牛を飼うのは、飼料の消費が激しく、人間様が飢えそうですが、何戸かが共有で飼育して農作業に労力提供させる分には、飼料も無駄ではないでしょう。

 「牛」がいないというのは、魏使を歓待しても牛肉は食べさせなかったと言うことでしょうか。(食べ物の恨み)

 食料として、ここに記載のない猪(飼豚)肉、狗(食用犬)肉を食べていたのでしょうか。それとも、明記されている魚介類以外は、完全な菜食主義だったのか、海の魚介類も生食する刺身主義だったか、疑問がわいてきます。

 この時代の中国で、沿岸部に刺身食の習慣があったようにも聞いていますが、魏使は、海の魚なら刺身でも食べたのでしょうか。

 このように、陳壽の抑制された表現は素朴な疑問を掻き立ててるのです。

 このように、陳寿は、なかなか味のある記事を書いているのです。

 私は、現に目で確認できる資料はそのまま読み取る主義ですから、魏志倭人傳の内容を紹介しています。

 

以上

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