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2020年7月 9日 (木)

新・私の本棚 長野 正孝 古代史の謎は「鉄」で解ける  1/11

 『前方後円墳や「倭国大乱」の実像』 PHP新書 2015/10/30

私の見立て ★★☆☆☆ 傷だらけの野心作   2017/12/15 追記公開 2020/07/09

*はじめに
 前書で、先頭からのダメ出しで力尽きたので、今回は冒頭と末尾で、集中的にダメ出しすることにしました。先ずは、冒頭部分で、著者の書きぶりと言葉遣いになじもうとしましたが、期待を裏切られて困りました。

*飛躍した進行
 通常、まずは、不吉にもタイトルで提示された『前方後円墳や「倭国大乱」』の解釈に触れて、読者自身の言葉遣いや歴史観になじませるものですが、それは端折られ、もやの中を引き回されている感じです。

 ついでながら、「実像」は誰かが見た外面であり、珍重すべきものでないと思います。「実像」を検証しようにも、墳墓の外観は見ることができても抽象概念である「倭国大乱」の外観は実像も虚像も、どのようにしたら見ることができるのか不明です。空疎な大言壮語は控えたいものです。

*考古学の悪用
 また、これも珍しくありませんが、考古学上の編年を、自己流で西暦年代に結びつけ、以後、暦年で書くということのようです。それは、著者の都合であって学界の本意ではないのですが、考古学成果は、一部を援用するだけで、背景の考察不足にお構いなしです。かくして、不確定な根拠を読者に知らせずして、延々と独演会が展開されます。

 全書の方針を明示しているという点ではいさぎよいかも知れありませんが、自分の所見を押しつけると宣言されては、読者も困惑するのです。

*行方不明
 漢武帝の朝鮮侵攻談義で、自身の言葉で事態を語りつつ、史記を援用しますが、語られている根拠が不明です。前提として、「西方の匈奴」と言いきっていますが、普通は北方です。九十度方位感覚がずれている乱文です。

*帆船綺譚
 西域から匈奴排除の結果、西方交易が通じ、帆船技術が入ったと言うために方位を曲げたようです。実際は、どこからの新技術なのか。通常、帆船は南海起源と見えますが、なぜ、頭から否定するのか不明です。

 これほど異質な技術が、漢都長安に届いて、それが、瞬く間に伝達し、山東に帆船造船が起こったと言うようですが、せいぜい数名と思われる異国の技術者が多少の資料を持参したとは言え、言葉も働きぶりも異なる異境の地に、斬新な造船業を確立するのに、どれほどの期間がかかるのか、考慮していないようです。漢都長安は、海を遠く離れた陸封の池で、海船など想像もしたことのない人々の世界なのです。

 正直、最初の一隻が進水するのに十五年、船台を並べて複数の帆船を並行して造船できるようになるのに、更に十五年と見て、最初の一隻で操船を修行したとしても、大挙水軍を進められるのには、大概三十年はかかると見られるのです。途中で、技術者も、治世者も代替わりしていることでしょう。

 大規模な技術の移管/習得には、大変な時間/年数がかかるのです。

                               未完

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