私の意見「陳壽の見た後漢書」謝承「後漢書」談義 補追 4/5
2016/03/22 追記 2018/05/05 2020/02/15 2020/03/31 2020/07/27 2024/12/21
私の見立て ★★★☆☆ 誤解、誤読の反面教材
*加筆再掲の弁
最近、Amazon.com由来のロボットが大量に来訪して、当ブログの記事をランダムに読み囓っているので、旧ログの揚げ足を取られないように、折に触れ加筆再掲したことをお断りします。代わって、正体不明の進入者があり、自衛策がないので、引きつづき更新を積み重ねています。
*「筈」押し一辺倒
福永氏は、後年、陳寿「三國志」全体を精読した上であろうが、劉宋皇帝の指示に従って補追と注釈を加えた裴松之が、後に散佚した史書の完本を「見ていたはず」と確認しようもない提議を持ち出しているが、衆知の如く、裴松之の注「裴注」には、都度引用原典が明記されていて、さらに、参照資料に関して、別途評価を加えているのであるから、そこにも挙げられていない史書は、参照するにすら値しない「ゴミ」と見るべきである。
まして、当時、史官でない素人の私撰史書であって、いまだ公的に取り上げられていない范曄「後漢書」の東夷傳を「実際は見ていたはず」だと臆測して、これもまた確認しようもない提議を持ち出すのは、どういう意義を認めている発言なのだろうか。
裴松之が、一読していようがいまいが、裴注に参照されず、論評を加えられていない雑文は、三国志解釈に於いて、存在しないと同義である。(現代風に言うと、「ジャンク」、ごみである)
まして、「魏志」の本質的な部分と関係の乏しい「後漢書」など、裴松之の書庫の片隅に積まれていたとしても、無いに等しいのである。
*粗雑な前提、無謀な提言
このように、福永氏は、幾重にも積み重ねた根拠のない推定の上に立って、魏志倭人傳の現行刊本に現実に明記されている「邪馬壹国」の文字は、当初の魏志「倭人傳」には存在しなかったと、根拠も何も求めようのない、一方的な作業仮説を立てているが、「もともと明確な根拠のない推定であるから、そのような根拠を否定する論理は立てられず、いわば、単なる私人の妄想と見られているから、そのために決定的な反論は現れない」ものである。
もっとも、批判能力が十分でないと見られるない一般聴衆にホラ話を、辻説法風に言い立てているだけだから、反論どころか、質問、意見は、出てこないのであろう。
丁寧に裴注時の状況を確認すると、参照されていない范曄「後漢書」の東夷伝記事が、実質的に、「魏略」の引用、節略にとどまっているのが、後世人に容易に確認できるように、陳寿が取りこぼした東夷記事は見られないのである。すくなくとも、「倭人伝」に対する裴注は、些事の補正だけである。
それは、魏志「東夷伝」の倭人伝に対する裴注が、大変寡黙であるところから見て取れるのである。恐らく、福永氏の脳裏には、夢想した資料が投影されていて、現実の史料の紙背に映じているのかも知れないが、それは、あくまで、個人的な幻想であり、何がどう見えているのかすら、明示していただかなければ、批判の仕様がないのである。
つらつら思うに、同時代の事象について、言論自由のご時世とはいえ、学術的な論考で、根拠の提示できない風評を云々することは蔑視されるものである。まして、誰も実証確認できない古代の事項に関する風評想像にかこつけて、他者の論考を罵倒するのは、何と批評すればいいのであろうか。誠にもったいない話である。
こうした強弁の類いのよく陥る失敗として、論考の基本的なところに大穴が空いているので、折角の提言が、熟読、精査されることなくゴミ箱入りする羽目になるのではないかと危惧する。
少なくとも、氏ほどの確たる評価のある論客は、率直で忌憚のない批判に値すると思うので、ことさら別記事を立てたものである。史学論考としては、別記事の後漢書論と一括して、氏の意見をゴミ箱入り扱いするものである。
未完
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