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2020年8月 2日 (日)

新・私の本棚 片岡 宏二 「続・邪馬台国論争の新視点」 1/3

 「倭人伝が語る九州説」   雄山閣 2019/12刊

 私の見立て ★★★☆☆ 折角の論考の基礎が乱調で幻滅 2020/08/02

〇はじめに
 毎日新聞古代史記事のお勧めで入手、熟読したが、片岡氏の意見は倭人伝勝手改訂を引き摺って低迷しているのが、難である。
 考古学が、発掘遺跡、遺物の現物、現場から出発するように、文献学は、「倭人伝」原文から出発すべきである。訳文は前世紀の遺物であり、「新視点」を謳うなら、手指を洗い、顔を洗い、出発点を刷新すべきである。

 なお、入手困難な本書より、さらに困難な前著は未読である。

*造語の弁解
 「性格」なるユニークな用語(独特であるとの指摘で非難では無い)について弁解されているが、世間で通用している単語に、自分なりの特異な意義を付するのは、読者に意図が伝わらず誤解を誘うので不適当である。言うならば、出版社が止めるべきものである。

 「イメージ」は、読む人ごとに解釈が異なるのに適例を示していない。

*依拠資料の誤認
 本史論で重大なのは、「倭人伝が語る」と銘打ちながら、倭人伝でなく筑摩書房刊の「世界古典文学全集 三国志Ⅱ 魏書⑵ 今鷹真他訳」以下、「筑摩本」を根拠としていて、読者に誤認させる虚偽表示である。

 史書訳文は原文そのものでない。凡そ世にある倭人伝翻訳は、訳文を国内古代史「俗説」に撓めている。倭人伝「翻訳」は、現代創作であり、筑摩本は、今鷹氏他が著作権を有する現代著作物であり創作である。

 史料翻訳は、付注して原文からの乖離を示すべきだが、当該翻訳は、訳者の書き足した文字を埋め込んで原文が読み取れない。つまり、学術的でない。氏が、倭人伝準拠の古代史論を説くのなら、原文に密着した解釈から開始すべきであって、翻訳は、あくまで参考にとどめるものではないだろうか。業界儀礼を離れて欲しいものである。タイトルに裏切られて不満である。

*やまと言葉の塗りつけ
 なぜそのようなことを言い立てるかというと、筑摩本は、なら盆地中心の世界観に基づき、俗耳に訴えるべく造作されているからである。

 如実なのは、冒頭の「倭人」「わびと」ルビである。訓読ふりがなは、当時存在せず、時代錯誤、学術的な偽りでしかない。ふりがなの主旨は、「倭人」は後世の「倭」とは単にひとの意の「人」の意図らしいが無理である。魏書編者陳寿は、格別の蛮夷と認知したから伝を立てたのであり、「訓読」など存外であるから、その真意は、「倭人」の典拠を探るしか無いのである。

 いや、氏は、そのような主張をしていないと言うだろうが、筑摩本を「倭人伝」と見なすのは、「わびと」史料観に従属していると言うことである。

*無理を通す話 事実考証の試み
 景初遣使が何年かと論じたくても、ならやまと国家が景初二年六月に使節を派遣するのは到底不可能である。そのため、関係者は挙って三年と読み替えるが、事実考証を図ると、そのような延命策は不毛である。

 景初二年八月に遼東郡を壊滅させた後の十月頃に両郡接収とすると、翌六月まで八ヵ月しかない。三世紀、帯方郡となら盆地の間、約千三百㌔㍍を、騎馬無しの純歩行であって、片道四ヵ月で踏破したという。

 宿駅整備された半島内官道をよそに、いつ着くともわからない半島沿岸連漕と想定しているから、底なしの無法である。それにしても、中四国経由は、道も何も無い蛮境の遠大な距離だが、どうやって踏破したのだろうか。

 とは言え、景初二年六月は、さらに不可能であるから、俗説は、史書誤記を提示して、景初三年六月を採り、後は言わない。同年元旦に明帝曹叡が逝去、新帝即位と言うも、改元は翌年であり景初が維持されていた背景がある。

                                未完

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