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2020年8月 1日 (土)

新・私の本棚 番外 上村 里花 毎日新聞 「邪馬台国はどこにあったのか」

「考古学界で優位の近畿説に反論 九州説の「逆襲」相次ぐ理由は」
 毎日新聞2020年7月21日 10時20分 (最終更新 7月22日 15時19分)

 私の見立て ★★★★★ 絶賛 毎日新聞古代史記事の復興          2020/08/01

〇はじめに
 当ブログ筆者は毎日新聞宅配購読者であるが、当時、留守で宅配停止していたのでWeb記事で拝見した。本記事は、全国紙に冠たる毎日新聞の古代史記事の復興と見て、勝手ながら賞賛した。従来、同紙で散見した纒向中心記事と異なり冷静な目配りで一般読者(納税者)に、古代史に関する適確な視点を提供する記事であるので、ことさら目立つ言い方をしたのである。

 記事中紹介されている片岡氏の著書の原文を入手するのに日数を要したが、確認した所では、記者の読解力は適確であり、先輩諸氏の変調と無縁である

*報道ならぬ騒動
 見出しが半ば揶揄しているが、末尾の高島氏の談話が説くように、「学界で優位」、「逆襲」は、復讐も逆襲もない学問論に不適切である。

*考古学界の動向
 いや、正体不明の「考古学界」であるが、実際は、「風聞」集団でなく、良識を有する論者が、寡黙な大勢を構成していると信じている。

 片岡氏の論議であるが、劈頭、纏向が支配的な学界風聞の引用である。学術発表が「報道」されていれば引用できるが、同紙を先頭に「ヒートアップ」とか「近畿説で決まり」など、野次馬好みの喧噪が書き立てられている。

 ここで、氏の論議は、概して冷静で、学界に蔓延る軽率な風聞を窘め、まことに貴重である。

 ただし、別記事(近日予定)書評で歎いたように、氏は考古学者であり、中国史書「倭人伝」の解釈で国内通説、俗説依存の読替え訳文を信奉し、原文の意義を取り違えている点が、氏の折角の冷静な論議を揺るがして、何とももったいない。

 また、氏の中国「古代国家」観は、時代離れした後世史学に染まっているので、ここではひっそりと治癒を祈るものである。

*時代錯誤「訳文」に依存
 端的に言うと、「倭人伝で晩年の卑弥呼は、千人の侍女をはべらせ、常に警護がつくなど、強大な力を持った姿で描かれる。しかし、それは半世紀近くの治世の間に生まれた権力で、当初はクニグニに「共立」された弱い存在に過ぎなかった。(後略)」と時代錯誤に染まっている。

 翻訳文に苔のように纏わりついた先入観を取り除き、描かれている原文に密着すると、以下の判断が提示できる。

 「晩年」は事実無根である。婢千人は、侍女とは限らない。身辺でなく「王治」(後漢書にいう大倭王の治所 「邪馬台国」)の警護であり、「強大な力」は、創作された幻影である。「半世紀近」い 治世とも、クニグニに共立されたとも書かれていない。男王を継ぐ王は弱い存在ではない。

 以上は、女王の「性格」(片岡氏の手前味噌造語)を纏向から九州北部を支配した権力者のものに仕立てた創作であり、原文に無い「俗説」に過ぎない。言うならば、『「魏志倭人伝』が描いた邪馬台国』も、同様の背景による「俗説」の被造物である。 「我田引水」に荷担するのは、十分に史料批判した後のことに願いたいものである。

*切望される原典回帰
 当記事を魏志に採用した陳寿は、同時代史家であり、時代錯誤に無縁である。女王の墓碑銘「倭人伝」の泥や苔を洗い落として欲しいものである。

*冷静な総括 百年、河清を待つ
 末尾の高島氏の談話は、冷静な指摘であり「逆襲」ではない。『現在の考古学界にはそれが決定的に欠ける。それが問題であり、課題だ』と断じておられるが、「問題」、「課題」には、明快な解答、是正策が示唆、ないしは予定されている。

 古代ギリシャの挿話「幾何学に王道なし」の流用であるが、中国古代史文献に「ジーンズとスニーカーで行き着ける散歩道」は無い。

〇まとめ
 本記事は、全国紙の古代史記事の正道を想起させる。諸先輩は、顔を洗って出直してほしい。人が代わっても毎日新聞の古代史記事は残るのである。
                                以上

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