新・私の本棚 河村哲夫 講座【西日本古代通史】「邪馬台国論争のいま」1/2
アイ&カルチャ天神 講座 【西日本古代通史】資料平成26年8月5日
〇はじめに
今般、若干の事情があって、河村氏の講演資料を(有償にて)提供戴いたので、学恩に報いるために、以下、冒頭部分の批判を試みたものです。
案ずるに、氏の本領は国内古代史分野にあり、以下引用する中国史料文献考証は、第三者著作から採り入れたものと思われますが、素人目にも、検証不十分な原資料を、十分批判せずに採り入れていると見えるので、氏の令名を穢すことがないよう、敢えて、苦言を呈するものです。
なお、当部分は、氏の講演全二十四回のごく一部に過ぎない瑕瑾なので、軽く見ていただいて結構です。また、「邪馬臺国」が、実は、「邪馬壹国」を護岸書が誤解したものが引き継がれたものであったとしても、氏の講演、著作の全貌を毀傷するものではないことは、ご理解いただけるものと考えます。あくまで、学術的な論証手法の瑕瑾を指摘しているだけです。
〇「邪馬台国か邪馬壱国か」
第9回『魏志倭人伝』を読む①倭の国々 1、『魏志倭人伝』
⑴邪馬台国か邪馬壱国か
①「邪馬台国」ではなく「邪馬壱国」が正しいとする説がある(古田武彦氏)
コメント これは古田氏の説でなく、三国志現存史料は、全て「邪馬壹国」(壱)との客観的事実を述べている。この客観的事実を否定して、「邪馬台国」とする強固な論証は、皆無である。原点の取り違えと見える。
・現存する最古の南宋(一一二七~一二七九)時代の『三国志』のテキストには、「邪馬壱国」と記されている。
※陳寿が3世紀末頃に著した『魏志倭人伝』の原本そのものは失われている。
コメント 古代史書の残存原本は皆無である。取り立てて言う事ではない。
②その他の文献
『魏略』の逸文、『梁書』『北史』『翰苑』『太平御覧』などには、「邪馬台国」と記されている。
コメント 魏略佚文は、原本でも正統な写本でもない。翰苑は誤記山積の断簡である。どちらも考慮に値しないごみである。梁書、北史等は、不確かな後世多重孫引きで信ずるに足りない。考慮に足るのは後漢書である。
※これらはいずれも現存する南宋時代の『三国志』よりも成立が古い。
コメント 三国志は、南宋時でなく三世紀の成立でどの参考資料よりも古い。各資料の現存史料は南宋以降のものである。何か勘違いしているようである。
③したがって南宋時代の『三国志』が、台を壱と誤植してしまった可能性が高い
コメント 南宋刊本は、ページごとに木版を彫っていて、活字植字ではないので、誤植、つまり、工人の活字拾い間違いはあり得ない。
南宋刊本の際は、大勢の専門家が、先行する北宋の木版刊本の内容を参照して再三に亘り、逐一確認して、木版を削ったのであり、誤写が起こったとしたら、それ以前の事態と見るしかないのである。
巷説は、【三世紀に三国志の上程後、誤写が発生した、つまり、150年後の范曄後漢書で見る「邪馬臺国」が、後に改竄された】というようである。
※そもそも「臺」と「壹」は字形が似ている。『魯魚の誤り』という言葉があるが、両者は誤植の起きやすい字といえる。
コメント あくまで、タラレバの憶測でしかない。因みに、可能性が二千分の一であっても、高いとの見解で見れば、それは高いのであろうか。
未完
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