倭人伝道里談義 号外 倭人伝道里行程記事の趣旨確認 1/1
〇はじめに 2020/10/13
今さらながら、倭人伝道里行程記事の趣旨を理解しない人が多いので「号外」です。短縮のため、私見断言御免。
〇帝国の要諦 「情報流通」
魏武、つまり、没後魏の武帝と諡された曹操は、孫子兵法を読破、注釈し、戦争で勝つ兵法を極めたのです。孫子曰、「敵を知り己を知れば百戦百勝」。
敵情探索はもとより、自陣営内情をつぶさに知ることが必須でした。喧伝される曹操諜報ですが、日常の指示と報告が迅速、確実であることを厳格規定したのです。そして、各郡太守などは、日報並み頻度で状勢報告したのです。
各郡太守などから遅滞なく報告が届くには、通信期間、必達期限の設定が必要ですが、中原は官道が整備されているので、道里で日程設定できたのです。
〇倭人伝の要件 日程確約
かくして、倭人が新参の蕃王と認知されるためには、所属帯方郡まで何日で通信するか、所要日数を確約するのが最優先だったのです。
当然、そのような日数表示は最速手段である官道「陸行」が必須です。風、天気まかせ、難船御免で、急行不能の船舶交通は、はなから論外です。
〇 例外許容された「水行」~最短日程確保
倭人伝独特の「水行」は、代替陸行がないので、余儀なく中原渡河同様の非常手段として認め、冒頭に「渡海、水行」と予告、渡海水行終了後、末羅国以降は「陸行」と正規運用に戻しています。臨機応変、首尾明解です。
本筋行程日程は、都(すべて)水行十日、陸行一月と明記されていますから、当然、計四十日です。
陳寿は、魏武曹操の威勢を継いだ今上晋帝に対し、「倭人伝」として新参蕃王の通信期間を明解にし、倭地内の諸国傍路は、細瑾だったのです。
以上は、行程道里の本質に関わる議論ですから、生煮えの文法論とか下手な言い逃れはできないのです。最近見た「纏向説言い訳集」は、「笑点」大喜利の如く、「言葉の曲芸」連発で「水行陸行」を混ぜっ返していますが、本質を踏み外した「失敗演技」は、爆笑を呼んで俗受けしても、落第です。
〇本筋と余傍
念押ししますが、郡から倭までの本筋行程を外れた余傍の国、なかでも、投馬国水行二十日は数日の渡海を含み、残りは、当然「陸行」ですが、所詮日数規定外です。
〇帝国の要諦再び
大陸王朝は太古以来文書行政で、一片の勅命で郡太守の首が飛ぶ中央集権ですから、官用通信は、乗馬の文書使が繋いで日々怠りなかったのです。つまり、道路宿駅の整備が官道沿線「領主」の義務だったのです。
因みに、通信期間は、諸国連合の盟主、「倭人」の王にも重大です。文書通信がないので、高官自ら、ないしは、信頼できる副官が移動して口頭指示を伝えることになり、一日、二日の到達範囲が限界です。諸国に「刺史」(率)を配しますが、小国王や刺史と王の間が片道十日などの間柄だと対話不自由でもあり、中央集権でない「倭人」ですから、現地裁量、自治に干渉しないのです。
〇音信不通の平和
投馬国は、普段は交通不自由で、国王御前合議に臨席できません。代理人を常駐しても、本国と通信不自由では、参政できません。「参勤交代」したのでしょうか。
その他遠絶諸国は名のみです。片道一ヵ月以上では対話どころか喧嘩も戦争もできません。
倭人伝談義で、遠絶諸国まで参集の総会で次代の王を共立するなど、まじめに説かれますが、夢物語、児戯の類いです。
また、遠絶諸国が互いに戦い、「日本列島」(古代史用語で、地図上の九州、中四国、近畿、東海まで、時には、関東を含める範囲を言う苦心の表現)の広域を揺るがす覇権争いの「大乱」など、到底、到底実行不能です。広域「倭国」の実在は、未検証で疑問です。
以上、特に手短にまとめたので、記事内の注釈を省略しました。他記事参照の手間がかかりますが、万事御免。
この項完
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