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2020年11月18日 (水)

新・私の本棚 季刊「邪馬台国」第12号 「邪馬台国の里程」 白崎 昭一郎 改 2/5

                  2018/09/18 追記2020/11/18
*余里論
 白崎氏は、三国志の「余」用例を総括した結果、「余」は端数切り捨てという見方です。どの程度までかについて、高木彬光氏は、15㌫程度と見たのに対して古田武彦氏は40㌫までとした、と先例を述べたうえで、それらは、史料に根拠を持たない(現代人の憶測)と否定しました。誠に妥当な意見ですが、どこへ話を持っていこうとしているのかすぐには見えてきません。
 白崎氏は、その上で、「余」で切り捨てた端数は、10ー70, 80㌫の範囲の数値であり得ると提唱しましたが、篠原氏は、基本的に、次の数値に繰り上がる直前までの幅に入る概数と捉えるようです。白崎氏は、倭人伝執筆時には、確たる数値範囲があったはずだとしています。まことに、趣旨のわかりにくい議論なので、もう少しお付き合いするしかないようです。

*新余里論
 以上の議論は、全て、「余」が端数切り捨てとする固定観念(思い込み)が災いして、解決から遠ざかっていると見ます。

 当方の意見は、次の通りです。
 倭人伝に多数の「余」が登場しますが、切り上げ表現である「弱」や「垂」(なんなんとする)は見られません。しかし、全数値が、基準値を超えた切り捨て対象の端数を持っていたとするのは、史料数値表現として不合理です。

 解決策としては、『倭人伝における「余」は中心値であり、後世で言う四捨五入の丸めを行った数値である』との割り切りです。
 これが、魏志全体、呉志、蜀志まで、果ては、中国全史書に敷衍できるかどうかは、当方の埒外であるのでご勘弁いただきたい。

*余里積算の弊害
 後段で、白崎氏は、里数表記を多桁表示の算用数字として表示した「表」について、「余」にはゼロもマイナスもないと断じ、「余」が積算されて繰り上がり上の桁に影響を及ぼす可能性を指摘しています。「余」が、桁下の端数を切り捨てると決め付ければ、そう判断して不思議はありません。
 以上のように、「余」を端数切り捨てと「仮定」して始まった論考ですが、次第に不合理が集積して、無視しがたい状態になっていると見えるのですが、「仮定」を論議することがなかったのは、後世に、悪いお手本を残したものであり、白崎氏ほどの先賢にしては、勿体ないと考えます。

*数字に弱い史官
 氏は、論考の蹉跌に気づいたものの、その原因を、そのような「不安定」な概数表記をした陳寿に対して「余り数字に強い人でなかった」と押しつけて、一気に断罪していますが、陳寿は、別に単独で編纂していたのではないから、編集者の集団には数字に強いものも多数いたろうし、当然、数字に関して厳重な検算は怠らなかったと見るべきです。

 また、当時の官人の基礎教養として、読み書きに続いて、「九章算術」のような幾何(数学全般のこと)学習があったことは明らかであり、当時に於いて、白崎氏が直ちに不審がるような愚行はなかったと見るものです。

 白崎氏ほどの見識の持ち主が、古代人に安易に付け回しするのは残念です。つまり、自身不用意に設定した、「余」は切り捨てという仮説の再検討に至らなかったのが、いかにも残念です。まずは、当時最高の人材が、渾身の著作で示した見識を疑うので無く、肘掛け椅子に納まった書斎考古学者たるご自身の見識を疑うべきです。

 くだけて言うと、西晋史官で随一の見識を持っていた、つまり、時世界一の陳寿と知恵比べするとは、いい度胸をしていると思うのです。同時代の当事者の見識を、軽々しく見くびるものではないと思うのです。

 まず、先人の筆運びを弾劾する前に、ご自身の解釈が倭人伝に適したものではないのではないかとの自問が必要と考える次第です。

 このような指摘は、言い方を変えると、古田氏が提示した「倭人伝解釈にあたっては、編者の見識を徹底的に信じることを根幹とする」との提言と同じ事を言っているのであり、古人曰く、「七度探して人を疑え」の趣旨にも通じるものです。

*余里の行き着く先
 先に述べた事に戻りますが、「余」が全てプラスであると想定するのは、古代史書の文献解釈の常道となっているとしても、倭人伝に適用すれば、二千字の範囲内で、たちどころに不都合を露呈するのだから、編纂時点で是正されていたはずであり、言うならば、現地確認を忘れた錯誤と見えます。

                               未完

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