新・私の本棚 番外 毎日新聞「今どきの歴史」 感染症と考古学 2/2
人口激減の謎に迫る 毎日新聞2020年11月9日 東京夕刊
私の見立て★★★☆☆ 購読料相当ないしそれ以上のもの 2020/11/10
○結末への疑問[承前]
通貨がなく、共通した価値観がない時代に、どうやって、遠距離間で直接取引が成立するのだろうか。不可解である。「朝鮮半島との交流」と気軽に言うが誰と何の交流をしていたのだろうか。いつから、文書交信ができるようになったのか。総じて、史料批判不在である。
下垣さんは「グローバル化にはリスクもあります。日本が開国した1854年の後、江戸でコレラが大発生した。ただ、そうなると、疫病というのは海外からやって来てひどい目に遭うと被害者意識を持ちやすいけれど、逆にこちらが伝えることもあるんだという意識が抜けがち。そこは気をつけなければいけません」と注意を促す。
コメント 縄文時代から古墳時代の時代で「グローバル化」は時代錯誤で不用意である。下垣氏は、当時の「グローバル化」をどう認識しているのだろうか。海峡や日本海の向こうすら「圏外」だったのではないか。素人の批判は僭越だが、だからといって、口ごもりたくないのである。
幕末で言えば、自ら渡航しないものがどうやって外国に被害を与えられるのか不可解である。
総じて、時代人は、「グローバル化」だなんだと言われて、何とか理解したとしても、どうにもできなかったはずである。
因みに、来訪者が疫病を伝えた例は、古代にもあったはずである。数世紀の歴史の上に立って、無策で疫病の侵入を許したのだろうか。
考古学者といえども、そうした「可能性」は否定できまい。どうすれば良かったのだろうか。お伺いしたい。
さらに、目の前で進行して対策も打てる疫病に対し、気づいた時には手遅れになりがちな環境問題に言及し、「モノを扱う考古学は過去の環境悪化を明らかにできる。長期的観点から物事を見るのが得意なので、この問題にこそ提言できます」と議論を発展させた。
コメント 「環境悪化」と言う前に、古代人の環境認識を明らかにしないといけないのだが、こうした言葉のない時代、どう古代人の意志を推察するのか、疑問である。大体、古代人が、疫病をどう認識し、「対策」をどう策定し実施したのか、わかるはずはないのに、なぜ、思い付きを言い立てるのか。
○まとめ
かつて、考古学界には、古代人の思いつかないような言葉や概念で古代を論ずる事の愚を戒めた先賢がいたように思うのですが、現下の考古学者には、古代の「謎」に迫る議論に、現代でも理解できない一般人が大多数の「現代言葉」を振りかざして受けを狙う自己主張しか存在しないのでしょうか。記者は、タイトル空振りを気にしないようですが、では、読者に何を伝えたかったのでしょうか。
*本分という事
当記事では、専門家の見解とは言え、時代考証が随分粗雑と見えます。考古学は、圏外事象に素人考えを振り回すより、学会内で専門的な論議を進めて、丁寧に足元を固めるべきではないでしょうか。
本記事を読み終わって、考古学界がパンデミックに直接対応など、飛んだ使命感です。どんな専門家でも、専門外の分野では、素人なのです。余計な風聞を気にせず、専門の学術分野を堅固に守ることが、学問の徒の本分ではないでしょうか。ご一考いただきたいものです。
○取りこぼし御免
いや、偶々、壮大なタイトルをぶち上げた記者の進め方のせいで、コメントが、結論めいて見える下垣氏の発言の時代錯誤史観に集中してしまいましたが、記事全体が「今どき」の学界風潮なのでしょうか。
以上、当然のことながら、考古学界の個人批判の意図ではありません。
以上
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