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2020年11月12日 (木)

新・私の本棚 歴史読本臨時増刊 「渡来人は何をもたらしたか」 2/2

 石井 謙治 古代の船と航海の歴史 新人物往来社 1994年9月刊

私の見立て ★★★★☆ 当記事に限定 瑕瑾ある卓見 2020/11/12

*遣唐使新羅道談義
 新羅道は、半島東南部の王治慶州(キョンジユ)から漢江河口部通称唐津(タンジン)海港を経た山東半島渡航の途次、慶州~唐津間を要所の驛亭を経る陸道としたのに拘わらず、氏は、西岸沖合航行と決めてかかっています。

 半島史素人にも、第三次遣唐使時点、西海岸は概して百済支配下で、漢江河口部付近には新羅が海港を設けていたと窺えます。つまり、西海岸沖合航行で百済領に寄港する行程なら「新羅道」と呼ばれることはないのです。

 因みに、半島西海岸から「大陸」に渡るには、海上行程の短い漢江河口部が唯一の適地であり、それ以外の土地からの渡海は、行程が長期化するため、不可能だったのです。あるいは、山東半島側には、新羅公館が設けられていて、百済船の入港を武力排除していた可能性もあるのです。いずれにしろ、当時、同航路は、新羅の独占、排他状態であって、新羅は、頑強だったのです。

*新羅の国威の根源
 新羅は、古来、南下する高句麗とこれを排除する百済との武力の狭間を、多大な犠牲を払ってこじ開けて自国領を確保し、中国に認知されるに至ったので、独占した海港の権益を損なう試みには断固実力行使したはずです。

 と言う事で、丁寧に時代考証すると、氏の唱える北路観は間違っています。氏は、慶州唐津間行程が陸上街道では、唐津から山東半島渡海船は、新羅船であり、和船の出る幕が無いので、意識外にしたようですが、先入観に囚われた論考は勿体ないものです。南方からの和船参入はあり得ないのです。

*沖合航行談義
 因みに、氏の「北路」は、特に難路ではないので、航路に熟知した現地「パイロット」(操縦士でなく水先案内)を想定していますが、当然、航路全般に通暁した案内人はいないので、寄港地で後続案内人と交代したはずです。これは、港港と「条件交渉」すればいいので、地元は、入港料や水、食糧の補給代に多額の関税もあり、商売として成立すれば維持できたはずです。

 結局、出発地政権と新羅、百済両国の関係を、「日鮮関係」と時代錯誤の概念で括るのは随分粗雑です。主として、百済と新羅の怨恨でしょう。

○百済新羅抗争
 古来、漢江河口の百済の王治漢城ですが、高句麗の南下攻勢で漢城陥落、王族全滅で要地を奪われ、百済は、旧都回復目指し角逐していたところ、新羅が小白山地越えで貿易最適地を奪ったので、百済は再度の失地回復を国是とし、南部でも新羅との東西紛争で、和解はあり得なかったのです。

*「北路」航海記欠落
 氏は、遣唐使などに「北路」航海記がないと歎きますが、新羅道陸行は、新羅使随行に臣従の体で、とても、実態を書き残せなかったのです。

 氏は、天平八年(736)の遣新羅使の半島東海岸への航海記を提示していますが、外洋航海の常識と見受けます。恐らく、筆者、読者ともども、内陸住民で海を知らなかったため、ことさら感動、特記したのでしょう。

○まとめ~半島内陸行の裏付け
 と言う事で、新羅慶州から漢江沿岸部の海港唐津への陸道は、倭人伝時代以来、確立された公道で迂遠で危険な沖合航行はなかったのです。
 帯方郡から狗邪韓国まで「陸行」解釈の当然とは言え、強力な支援です。

 氏にしたら、新羅道陸行説は天敵なでしょうのが、結果として、倭人伝行程道里解釈に、長く暗雲を投げたので、まことに罪深いのです。
                                以上

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