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2020年11月 7日 (土)

新・私の本棚 藤田三郎 吉野ヶ里遺跡と邪馬台国 季刊「邪馬台国」第138号 2/3

 唐古・鍵遺跡から見た邪馬台国 吉野ヶ里遺跡指定30周年記念シンポジウム
 梓書院 2030年7月刊 2020/11/07記

 私の見立て ★★★★☆ 良心的で開明的 考古学の王道を示すもの

○環濠の使命考 承前
 南和支流は、大和川に流入する支流の一部に過ぎず、更に遡った纏向との連絡に、川船を多用するほどの豊かな水量は維持できなかったはずです。もちろん、高低差があるから、連絡運河造成不能は、自明と思います。そもそも、土木工学の未発達の時代に、現に流れている河川の川幅拡幅や底浚え改修などできなかったはずです。

 それにしても、環濠への入り口に、興味が募ります。渓流が直接流入すると土砂やごみの進入が予想され、浚える労力を低減するには、水溜に一度呼び込んで流速を落とし、沈殿させて、水門を経て導入するように思います。
 環濠浚えは大事業ですが、水溜浚えは、春秋社日にこなせたはずです。
 上流に、別の環濠があるとしたら、そちらが貯水してごみ取りしてくれるのでしょうが、水量が減る可能性があり水運に差し支えると思えます。渇水期には、水が途絶えて、環濠が干上がるかも知れません。空堀は、野獣侵入防止に有効でしょうか。

 「運河」から内陸湖沼への繋ぎ水路は、どんな構造、運用で実現していたのでしょうか。
 環濠からの適度の流出を保つには水門が必要ですが、川船の出入りも必要ですから、結構な設備になるはずですが、その時代に実在したのでしょうか。
 そもそも、盆地の傾斜地の川の流れの途中に環濠運河を設け、自由に出入りすることなど、不可能ではないでしょうか。いや、別に、実証実験して見せろというのでは無いのです。図示していただくだけで十分です。

*治水の意義考
 結局、運河水運より、灌漑疏水の働きが強いのではないでしょうか。水田灌漑に、十分な水量を水分供給し、頭領の面目を保ったのでしょうか。
 豪雨増水時には、集落への浸水を防ぐために緊急排水が必要ですし、それ以外は、頑として保水しないといけないのです。治水は、環濠の使命です。

*土砂堆積問題
 以上は、途中で土砂やごみを取り除く設定ですが、渓流の土砂は、湖沼干拓に必要ですから、堰き止めて良いのかどうか疑問です。

*木材調達考
 同集落では、青銅器の鋳造、土器の焼成と、大量の薪が必要だったと思われます。古代遺跡の消長に重大な影響を及ぼすのは木材資源の枯渇です。奈良盆地では、樹木伐採しても跡地に植樹しておけば、数十年後には、伐採可能な樹木が復活するのでしょうが。
 それに加えて、多数の建物を建造すれば、一段と樹木資源の枯渇が懸念されます。言うまでもありませんが、伐採過多で山腹が樹木を失えば保水力がなくなるので、土砂喪失の危険と相俟って水害の可能性が高まるのです。いや、雨季には、怒濤の如き積水がやって来そうですから、深々とした環濠は必須だったと見るのです。

 石積みの得意なローマ人なら、水防ダムを築くところでしょうが、土木工学は未発達だし、石切できる鉄器もないしで、結局、多数の墳丘墓に、それぞれ環濠を設けるしかできなかったのではないでしょうか。

 このあたり、考古学の基礎科目と思うので、当然、多大な考察が行われているはずなのですが、この場では、洪水があったという程度で、深刻さや発生要因については、語られていないように見えます。

○まほろば壺中天考
 三世紀、纏向に古代国家があって、それこそ、権力にものを言わせて、日本列島各地から献上品が届けさせたとの図式が専らの「畿内」論でしたが、本講義で説かれているのは、壺中天で、地域社会が種子から発芽し双葉から幼木となって成長する姿であり、言うならば、奪わず殺さずの共存と徳治の思想が窺えます。

*侵入の謎
 ところで、壺中天には、まほろばの青垣なる高嶺を越えて大挙侵入して奪い取るに値する財物がありますと、外界に伝わっていたのでしょうか。
                                未完

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