新・私の本棚 番外 NHKスペシャル 「“邪馬台国”を掘る」 1/4 改
2019/01/25 追記 2021/01/03
番組放送年 2011年 NHKオンデマンドサービス(有料)で視聴可能
私の見立て★★★★☆ 必見の古典
□番組詳細
邪馬台国、卑弥呼という名の女王が君臨した3世紀の王国である。九州と近畿で所在地を巡る本格的な論争から100年目の2009年(平成21年)、奈良県の纒向(まきむく)遺跡で卑弥呼の王宮といわれる巨大な建物群が発掘され邪馬台国の最有力地になる。翌年、さらに発掘調査が行われ、連合国家を示す土器や人為的に破壊された銅鐸、そして2700個を超える桃の種が出土。日本古代史最大の謎に挑んだ発掘調査に密着した。
語り:三宅民夫 この動画・静止画の番組放送年 2011年
*総評
当番組は、纏向遺跡の最新成果を中心に堅実に構成しています。最近のNHK古代史番組が、見てくれのだまし絵と素人の放言に毒されているように見えかねないのと違い、実戦研究者の本音に近い発言が聞けるのが貴重です。
但し、全体に、物々しい「日本古代史最大の謎」に対して、纏向当事者が「我田引水」を天下に誇示したいという気負いが、ありありと見えます。
以下は、貴重な番組に敬意を表しつつあえて批判を加えたものです。
*桃種出現
番組中盤のやや後で、後年、厄介な年代鑑定騒動を起こす桃種遺物の出現情景が見えますが、見る限り、土器破片と同様に、掘り下げた穴の中に散らばっていて、貴重な礼物を纏めて埋蔵したとは見えないのです。
どうも、封泥や金印のような、トップ指示の賞金、昇進ものの「大発見」にばかり気が行って、想定外の桃種は、迷惑なゴミとしか見えなかった感じです。トップに厳命されても、あるいは、使命感を感じていても、考古学の発掘で、山師根性は動機不順ではないでしょうか。
山師根性のせいか、厄介者としか見えなかった桃種の埋蔵状況の記録・保存は、等閑だったようです。
もちろん、全体を冷凍凍結させて、丸ごと取り出して冷凍保存しておけば、上下、左右の配置が保存される上に、各標本の周辺の泥が特定できるので、発掘手順として完璧でしょうが、それは結果論と言うべきで、せめて、層別に取り出して、三次元の配置を記録しておけば、いらぬ詮索をうけなかったことでしょう。
少なくとも、ごっそり掘り出して、いきなり散水ホースで水洗いする前に、一々付番した上で、個別に精査し台帳記録すべきだったと感じます。先ほど書いたように、当出土物については、後年、年代鑑定騒動が起こっていますが、適切な標本管理がされていないものを、厖大な国費を費やして精密鑑定にかけるのは、一種の錯誤と感じさせます。
*情報隠蔽疑惑
ちなみに、安本美典氏によれば、桃種は、吉備地域で同等ないしはそれ以上の出土が報告されていて、数は決定的な議論にならないという事です。また、大型建物についても、奈良界隈では最大であっても、九州北部に至る「日本列島」では、安直に最大とは言い切れないような感じます。というものの、当時、全国放送などの報道はなかったので、誰も、建物を比較測量して、番付発表していなかったでしょうから、「天下」最大最高と言っても、名声を博するのは、ほんの隣近所に過ぎなかったと思われるのです。
纏向帝都の広報担当は、「日本列島」などと誇大に謳いつつ、自説に不都合な事実は隠蔽するのでしょうか。そして、天下のNHKが、情報の裏を押さえないのは、大変不都合です。
*桃種雑談
大量の桃種が出土したのは、遺跡建物成立の前世紀から特定の祭礼が行われていたように見えます。年百個なら三十年間の集積となります。
なにしろ一回限りの祭礼の消費とすると、果樹栽培はどうしたか、どこに桃園を設けたのか、果実貯蔵か桃種貯蔵か、となります。
その日に備えて数百本分を確保するには、担当役を任命し、人数を割り当てるのが必須ですが記録はないのでしょうか。
未完
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