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2021年1月29日 (金)

新・私の本棚 番外 小澤 毅 邪馬台国の会 第386回 講演会 1/4 改

『魏志』が語る邪馬台国の位置:小澤毅(三重大学教授) 2020/02/23開催
私の見立て ★★★★☆ 堅実 不偏不党 2020/04/04 改定2021/01/29

〇始めに
 小澤氏は、三重大学教授として紹介されていますが、同大教授着任以前は、橿原考古学研究所及び奈良文化財研究所の研究者として著名のようです。

 不偏不党と書いたのは、考古学専攻とはいえ、文献史料にも造詣が深く、本講演に於いても、国内史料まで取り込んで幅広い視野から考察しているので、特定の統一見解に偏しないと見るからです。ここに、賛辞を呈します。

 以下、氏の講演記録を参照しながら、当ブログ視点から批判しますが、見解の相違の摘発で無く、異なる視点からの意見で氏の学識の更なる研鑽に寄与したいと思っています。因みに、本稿は、季刊邪馬台国誌第139号に掲載されていますが、誌上には、些細とは言え、編集時の脱落らしい部分があり、文献批判する際には、注意いただきたいのです。

1.1 はじめに
*至当と不当の交錯
 氏は、冒頭で、『魏志』を「通常『倭人伝』という二千余字」と定義しますが、『魏書』同義で通用の「魏志」は、広く定着した学術用語を勝手に転用するのは禁じ手です。文献史学部外者のため、「倭人伝」通称が定着の史料を、それと知らずに我流で呼び変えて事故となったようですが、誰か助言しなかったのかと残念です。
 本文定義の前に、掲題「魏志」が先行予約済みで読者は混乱します。俗称『倭人条』を通称『倭人伝』とすれば、学界作法にも反しないでしょう。

 それはさておき、「第一級史料」評価は至当であり賛辞に値します。この程度の表現でも、世間には、色々難癖を付ける人がいて、人格を疑わせる攻撃的言辞が飛び交うのですが、要は、総体的評価で、一番上質と見ているというだけで、およそ、史料には、誤記や誤伝があるのは、言うまでもないことなのですが、世の中には、内容に一つでも作文や齟齬があれば、史料として信用しないと、極端な発言をすることがいるので、氏のように、穏当な発言をしていただける方がいると、ホッとするのです。

 氏の史料観は、基本信条、「モットー」なので「明確に」記憶したいものです。

 とは言え、氏は、劈頭で「やまと」とふりがなした「邪馬台国」を信奉し、「モットー」と矛盾する誤謬を掲げているのは、もったいない話です。「魏志」の文献論議に、どうして、無関係。無根拠の憶測を持ち込むのでしょうか。多分、色々忖度しているのでしょうが、学問上の論期せに対して、異物が練り込まれているのは、もったいない話です。

*それは問題である
 因みに、氏の「問題」は、古典的な意味を守っていて、解消すべき「難点」でなく「課題」と見えます。定説派は、論議の際に、相手の論議の欠陥という意味に転用していて、意図が通じず、時に、無用のきしみを起こします。
 賢者が用意した「問題」には、必要な知識を身につけていれば自ずと解ける「解答」があるので、怖れる必要は無いのです。

*諸書の泥沼

 氏は、定説派の定番に似て「諸書」を羅列しますが、氏は、「諸書が『魏志』を引用するにさいしては、粗略な抜き書きと再構成がしばしばおこなわれており、いずれも史料的価値は『魏志』に比べて数段劣る。よって、それらの引用文を『魏志』以上に重視するのは、本末転倒といわざるをえない。」と読解評価を明記していて、この点を初稿で誤解していたのは、陳謝します。

*後漢書適正評価
 氏は、定説派の定番に似て諸書を列記しますが、史料の質に大差がありバラバラなのを、芋の子のように羅列して、数で片付けるのは、「ド」の付く素人だけです。

*後世史書・類書山積の惨状
 先行ないしは同時代に近い史書中、袁宏「後漢紀」は、東晋再興後、間もない時期の編纂であり、比較的、後漢書文書に近い資料が参照できたものと思われます。後漢献帝が半ば廃都と化した洛陽近郊に復帰した建安年間に、公式史書に準ずる位置付けで編纂を命じたものであり、杜撰な先行史書と異なり勅許で後漢公文書を参照できたと思われます。後代劉宋の笵曄は、散佚した後漢公文書に加え、後漢紀を大いに参照したものと思われます。(前漢紀と混同していたので、訂正しました。2021/02/05

 本稿関連の東夷記事の由来ですが、後漢創業期以外、桓帝、霊帝期以降は、東夷との交信がなく、依拠すべき公文書がなかったため、范曄は、対象年代がずれている魚豢魏略という、魏志同時代の著作から、後漢末と粉飾できる部分の「流用」、「創作」を行ったと見えますから、魏志批判への起用は本末転倒です。
                                未完

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