新・私の本棚 番外 「邪馬台国サミット2021」 (1) 速報編 1/3
[BSプレミアム] 2021年1月1日(金) 午後7~9時 NHKオンデマンドで公開中
私の見立て ★★★☆☆ 前年比改善顕著 前途遼遠 2021/01/30
NHK番組紹介引用 番組内容
日本史最大の謎のひとつ邪馬台国。どこにあったのか?卑弥呼とは何者か?第一線で活躍する研究者が一堂に会し、最新の証拠や資料をもとに自説をぶつけ合う歴史激論バトル。
出演者ほか 【司会】爆笑問題,【解説】本郷和人,【出演】石野博信,上野祥史,片岡宏二,倉本一宏,佐古和枝,高島忠平,寺沢薫,福永伸哉,柳田康雄,渡邉義浩
*はじめに
NHKの古代史(三世紀)番組前作は、司会者が揃って素人の上に素人論者の乱暴なコメント連発で幻滅したのです。その後、民間放送の広く取材した番組で、司会者の含蓄のあるコメントに感心したものです。NHKの旧作使い回しにはげんなりしていましたが、ようやく新作にお目にかかりました。
新作も、背景に倭人伝刊本を見せながら、「邪馬壹国」、「壹与」を、「台国」、「台」と言い換える悪習に幻滅します。また、魏使が難船必至の海上迂回で驚くのです。そうした基礎固めが疎かで脚もと乱雑では多難です。
不吉な序奏から、意外に冷静な論議となり順当な展開でした。前作は、纏向広報担当風で、年々当ブログの批判がきつくなったのです。
*総評
二時間の番組の全面批判は無理なので、大きな難点にとどめましたが、概して、纏向論に苦言が集中するのは仕方ないところです。
論者の意見が順次提示されましたが、九州説は、「歴史激論バトル」は気にせず、ゆったり紹介され、堅実な考察と思わせ、ことさら批判するに及ばないと思ったのです。
これに対して、纏向論者は、「歴史激論バトル」を真に受けたのか、前作の提言を越えた一段と強引な展開で、一視聴者としては、無理するなよと言う感じでした。
*考古学の本分喪失
例えば、論者提言に噛みついて卑弥呼、箸墓、台与の年代比定は確立されているとの決め付けは滑稽でした。
「考古学の財産は、遺物、遺跡に基づく堅実な考察であり、同時代文字記録は存在しないから時代比定は不確実であり、不用意に文書資料を取り込むと考証が歪む」、というのが、先賢の戒めと思うのですが、ここは、自説絶対で干渉は許さないと論争にしないのです。
倭人伝独善解釈に引き摺られて考古学考察を撓め、倭人伝解釈をそれに沿わせようとしているのは、無理矢理という感じが拭えません。
*イリュージョンの不毛
今回、纏向遺跡の「再現」動画を上映しましたが、素人目にも高価な「イリュージョン」(詐話)と見えます。考証なしに見栄えする映像眩術を創造するのは、何を目論んでのことか、一納税者としては、賛成できないのです。
例えば、堂々たる運河で、両岸から荷船を曳く図は虚構そのものです。運河で、どこからどこへ、どんな質量の何を運んだのか。着いた荷は誰がどう享受したのか。地道に解析しないでの児戯画餅は勿体ない出費です。
三世紀当時、河内平野は未開地、内海水運は未開設ですから、大量の荷物が届くはずは無いのです。また、当時盛大な経済活動があれば、纏向王朝は立ち所に天下を席巻したはずです。成長曲線を想像するとそうなります。
想定する巨大建物「都市」に食糧供給は伴わず、それを支える収入源が見当たらないので画餅なのです。時代考証無き「誇大化」に見えます。年々イリュージョンが誇張されていくのは、痛々しいものがあります。
纏向陣営は、そこまで虚飾に励まないといけないほど、追い詰められているのでしょうか。
未完
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