私の本棚 相見 英咲 「魏志倭人伝二〇〇〇字に謎はない」 最終 1/30
講談社 二〇〇二年一〇月刊
私の見立て☆☆☆☆☆ 詐欺である 2018/04/12 追記 2019/07/22 2021/07/30 2021/12/10
*前置き
本書は、刊行以来十五年間当方の目の届くところに来ず、二〇一八年になって初めて目について購入した。実に、美麗な想定であり、講談社の出版物であるから、権威を持ったものと感じてしまうのである。ただし、書評を見かけないので、絶賛、好評ではないようである。
いや、古代史分野では、タイトルを大きく構えた書籍は、見かけ倒しが多いので、大抵は御遠慮申し上げるのだが、今回は、手元の書き物の参考にと購入、一読したのである。後悔先に立たずである。
*総評
結構迷ったが、最悪の判定、星ゼロとなった。「金返せ」である。
当方の好みに合わないだけなら、買わない、読まないで、何の迷惑もないが、本書は、「確実な史料に基づき、先入観、俗説を廃して、まじめな議論を進める」と銘打って読ませながら、突然変節して裏切っているのである。
より重大なのは、そのような変節の兆しを表明せず、読者を落とし穴に導く書法を取っているからである。
重大な策謀であるので、ここに高らかに宣言するのである。それでも、あえて買い込んで読むのなら、それは、ご当人の「酔狂」である。できれば、図書館の利用をお勧めする。
*警告~2021/12/10
事前に警告しておくが、氏の「用語」は、他に例のない独特のものであり、時代錯誤と重ねて、氏の論考の文意理解を困難にしている。そして、そのような「異様な」「用語」世界を通じて、倭人伝や諸先行文献の解釈を聴いても、何のことか掴めないのである。そして、天下の講談社が、そのように用語が混乱している書籍を、編集、校閲せずに「単行本として」出版した意図が知れないのである。世上には、倭人伝解説書はデタラメなものばかりだという非難が見られるが、本書は、そのような非難に結構寄与しているものと見えるのである。
当ブログ記事は、世上諸書籍の典型、平均値ではないが、最悪では無いとだけ申し上げる。近年、新書形の「書籍」は、「持ち込み原稿をそのまま出版する」例が珍しくないから、もっと、編集・校閲の欠けた書籍も有りうるのである。「下には下がある」のである。
当方も人間であり、見せかけの抱負に共鳴して、肯定的な書評を書き始めたが、当方が支持できる発言を拾おうとして飛ばし読みして、出てくるのは、トンデモ発言ばかりで、座り直し、読書眼鏡を磨いて、丁寧に読み進んだのである。評価が手厳しいのは、騙されたからである。
と言っても、書籍編集の専門家ではないから、素人の技で万全ではないから、見当外れや指摘漏れがあっても、ご勘弁いただきたい。
書籍購入代金は、やりくりで埋め合わせするとして、否定的な書評を何とか建設的な苦言にと書き整えた努力は、当方に特に得るところがないから、限りある時間を奪われた恨みは尽きないのである。また、当事者の反論も弁明もないから、改訂の度に、指摘がきつくなるのも、ご容赦いただきたい。
*プロローグの酔狂
冒頭の一幕は、新説開示の枕として、別に異例でもないが、「著者が天啓を受けて、本書の論説の理路を幻視した」というのは、当人にはそうだろうが、他人が一切知り得ない思考世界なので、自慢されて同感も否定もできない。
大事なのは、「神がかり」を契機として構築した所説が実証できたかどうかである。実証のない天啓は、個人的な幻想である。ざっくり言って、天啓の90%は「ゴミ」である。それが耳障りなら単なる「錯覚」である。高々と謳い上げるべきものではない。
ちなみに、古田武彦氏は入浴中に、道里説解決の天啓を受け、そのまま飛び出したので「アルキメデス的天啓」だが、大事なのは実証であり、氏は、それ以降順当に論証しているが、本稿を含めた当方の指摘で「アルキメデス的天啓」は覆っている(と、勝手に思う)。
当方は、やはり湯船で、今書いた、氏の天啓説への反論を思いついたが、別に興奮せず、飛び出さずにそのまま入浴を続けた。成り行きは、まことに陳腐だが、反論は有効だと信ずる。
*安請け合いの非
末尾に「知的興奮」と言うが、推理小説でもあるまいにどんでん返しや犯人捜しは論外であり、読者は、真理に触れ、知識を深めたいのであって、心地よく騙されることを期待して読んでいるのではない。
盗まれたと思われることは「絶対にないであろう」と言うが、口先だけの強調表現の大安売りで騙すのは、盗みとどう違うのか。要は、騙りは犯罪なのである。
未完
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