私の本棚 相見 英咲 「魏志倭人伝二〇〇〇字に謎はない」 最終 19/30
講談社 二〇〇二年一〇月刊
私の見立て☆☆☆☆☆ 詐欺である 2018/04/12 2019/07/22 追記少々
*批判の儀礼
榎一雄氏に、「誰かの著作に非難すべき点の複数例が見つかっても、それで、その人の全著作を否定すべきでない」という至言がある。
当方も、著者が本書に記した言葉の多数の問題点を取り上げているが、当然、本書を全否定する無礼は犯していない。指摘していない部分には批判を加えていない。一般化した批判をしたとしても、あくまで、ここにあげた点のみのことである。
*個人的な辞書
気合いの入った読者なら誰でもすると思うが、書籍によくわからない言葉が出てきたら、先ず、その前後を読み、それでもわからなければ、文書全体を読んで、なんとか理解しようとする、一種の辞書作りなのである。
もちろん、辞典を引くのが解釈の常道だが、よほどの特異な言葉でない限り、辞典に出ているような代表的な意味は、読者も了解しているのである。それでは、意味が通じないと感じて、辞書を頼るのである。
*本書の辞書
本書は、不用意な用語起用の弊害が頻発して、読者を躓かせるものであり、用語統一が無く、補足無しの言いっぱなしのため、躓きから立ち上がるのが難しい。(実際上、不可能という意味である)
比喩を変えると、とかく、素人撮りの不出来な動画が、視野が揺れてブレブレの上に、しきりに場面転換するのでは、めまいを呼んで、鑑賞に堪えないのであるが、本書の論考展開が、それに似ていなければ幸いである。酒酔いは心地よいことが多いが、読書で船酔いはたまらない。
*問題と解
単に「問題」というと、著者自身が別の場所て言う「課題」と類似の言葉であるが、単純に、「難点」の意味で使うのは、一意的に解釈できないので、 学問書としては、用語が不適当である。
英語国のこどもの意見で、数学(算数)の教科書は、問題(problem)ばかり多くて悲しい、と言うものがあるが、当方も、著者の安直な言い切りに不満を言いたくなる。
単刀直入と粋がってみても、手抜きしすぎて読者に意味が伝わらなくてはどうしようもないのである。
同様に、「議論」(discussion)に問題が多いというと、論客との議論の際に問題提起ばかりで、回答を示していないとも取れる。所説とか提言とか、素直に読み取れる言葉にすべきではないか。
これが初めてでも最後でもないが、説明抜きの、生煮えの比喩の捨て台詞は、読者の理解の努力をすっぽかすので、不満と徒労感が積み重なるのである。
未完
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