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2021年7月20日 (火)

新・私の本棚 長野 正孝 古代史の謎は「海路」で解ける 1/9 最終改訂

 卑弥呼や「倭の五王」の海に漕ぎ出す PHP新書 2015/1/16
 私の見立て★★☆☆☆      2017/12/12 補充再掲 2020/07/08 2021/07/20

◯はじめに
 以前、本書不買(買わず)判断の背景を三回にわけて書いたのです。

 要は、惹句の部分に、商品紹介として不出来な文句が並んでいたから、これでは、とても売り物になりませんよ、と書いただけであり、新書編集部のずさんな仕事ぶりへの批判が、半ば以上と思います。

 以後二年半に、結構参照されたので、「買わず飛び込む」と言ってられず身銭を切って購入しました。旧記事抜きで書いて、時に重複、時に途切れますが、ご了解いただきたいのです。
 そして、まだ、主旨が届いていないようなので、再再掲しました。

*言葉の時代錯誤
 まず、基準として明確にしたいのは、用字、用語のけじめの緩さ(あるように見えないが)です。

 用字、用語は、同時代を原則とし、同時代と現代で変化があったために誤解しやすい言葉は、初出時に注釈して、時代錯誤を避けるものです。近年、魏志倭人伝は、三世紀中国人が、同時代中国人のために書いたから、時代と目的を認識して解すべきとの趣旨の意見があり、至言です。倭人伝論考で、カタカナ語や当代風の言葉は読者を混乱させるので、「断固」避けるべきです。

 当時の適当な言葉がないのは、当時の人々の念頭にない、全く知られていない概念だったからであり、知られていない概念は、当時の人々の動機にも目標にもならないのです。時代錯誤の用語を使うのが避けられない場合は、丁寧に説き起こして言い換えを示すべきと考えます。

*「海路」はなかった
 いや、こんな話が出るのは、本書の表題で「海路」と打ち出しているからです。引用符入りですから現代語と見て取れというのは、読者に気の毒です。

 古代中国語に「海路」という言葉が無かったので、中国古典全文検索で、魏晋朝まで「海路」は出て来ません。三国志、倭人伝にも出て来ません。当時「海路」が無かったのは、「海路」で示す事柄がなかったからです。

 「海路」があったとすると、それは、官制の街道であり、海中に道路を設えたように、経路、里数、所要日数が規定されます。所要日数は、国家規定文書通信の所要期間として規定されるので、保証するために、整備、補修の維持義務が課せられるのです。
 所定の宿泊地、宿場の整備も必須です。宿場は文書通信の要諦であり、維持義務が課せられます。道路維持は理解できても、海路維持の説明がないのが不思議ですが、ないものに説明はないのが当然です。

 と言うことで、本書筆者は、本書の商品価値の要であるタイトルの用語選定を誤っているのです。それは、単に字を間違えたのでなく、「海路」と言う概念の時代考証を間違えているので、まことに重大です。

 これに対して、「渡海」は、川を渡るように海の向こう岸まで移動するということです。古来、中原の大河には橋が架かっていないのが常道なので、街道に渡し舟は付きものですが、特に渡河何里、所要何日とは書かないものです。渡海も、普通は、道里、日数を書かないものです。
 また、日程を定めない海上移動は、「浮海」と呼ばれます。

 いずれも海路を行くという概念とは無縁です。
 賑々しく著書を公開するには、十分な下調べが不可欠です。そのような事項を出版社が確認していないのも、不審です。
 出版社編集部は、世間の信用とか、恥さらしとかを怖れていないのでしょうか。勿体ない話です。
                               未完

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