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2021年7月24日 (土)

新・私の本棚 上発知たかお 『混迷・迷走「邪馬壹国」比定地論争の真実』 1/2 追記

 魏志倭人伝の女王卑彌呼の居場所は100パーセント宮崎平野にあった
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私の見立て ★★★★☆ 健全な視点、但し未熟成    2021/03/20 追記 2021/07/24

〇はじめに
 諸所に、同意したい見解が多数提示されていて、同感、同感とうなずきかけて、すぐ、意見の転進(迷走などではない)を見て首を傾げたものです。

〇足りない点~先行諸説の克服
 参考文献に、古田武彦氏と安本美典氏の著書が見られません。文中で、「邪馬台国はなかった」と書いているという所を見ると、この部分は、誰か(不注意な人の)受け売りかと思われます。顔を洗ってください。「近年」も奇っ怪。
 つまり、新説は、有力な先行諸説を理解した上で、無意味だと既に排除されている「脇道」を取る際には、念入りの検証が必要ということです。率先して「混迷」「混迷」を自演されては、付き合いきれないので、本書の大部分の考察は、一瞥しただけで、お蔵入りです。折角、健全な始発点を選んでいるのに、勿体ないことです。

 古田氏は「短里説」創唱者と書かれていますが、それは不正確だし扱いが不適切です。氏は、「里程記事」解釈を通して邪馬壹国博多説を唱えています。氏の短里説を論ずるなら氏の所在地説を乗り越えねばならないのです。

 因みに、短里説は、随分以前から説かれていましたが、確たる論説になったのは、藤井氏の書であり、それは、帯方郡から狗邪韓国まで({郡狗}という)を七千里とするなら、そこから渡海三千里を経た末羅国は、帯方郡から一万里であり、「倭」は、末羅国から二千里、つまり、郡狗道里の七分の二の辺りに存在するという明確な説であり、自ずと、ある範囲が想定できます。(藤井滋「『魏志』倭人伝の科学」『東アジアの古代文化』1983年春号)
 短里説を広く紹介したのは、まずは安本美典氏であり、氏は朝倉説です。

 この提言に対し、正史である魏志に書かれているその道里は、魏朝明帝曹叡により秦始皇帝施行の「普通里」(450㍍程度)が廃され、「魏朝里」(75㍍程度)が魏制とされたとの判断が古田氏創唱の「魏晋朝短里」説です。
 一方、安本氏は、そのような国家制度は無かったとしています。

 氏が、両説のいずれに組みするにしても、長年論議されている「短里説」に関する認識不足は、氏の浅読みを思わせて信用をなくしているのです。私見ですが、氏の判断は、それぞれの提言の原文に触れず、諸賢の評価にも触れず、細部の確認がいい加減なために、あやふやな私見と見られているのです。

〇奇妙な「東治県」談義
 また、何気なく「東治県」などと混乱していますが、未だかって、「会稽郡」「東治県」が存在したことはありません。
 世間で議論されているのは、倭人伝の「会稽東治」が「会稽東冶」の誤記であり、これは「会稽省東治郡」ならぬ「会稽郡東冶県」の誤断でないか、などの論議であり、これを無視して、勝手読みしているのは、軽率、不明で、妙薬のない深刻な病患です。

〇今さらの後漢書批判
 後漢書史料批判、史料素性調べ不足で、倭記事解釈に深刻な錯誤があります。
 笵曄は、後漢の歴史史料、つまり、国家文書に基づき光武帝本紀の倭の記事を書きましたが、他の有力後漢史書、袁宏「後漢紀」にも、同主旨の本紀記事があり、倭人伝にも裏付け記事があるから、この記事は信頼できると言えます。
 但し、氏が引用している倭に関する地理的な記事には本紀に裏付けがないのです。つまり、倭が参上した公式記録がない以上、史官視点では風聞、憶測に基づく創作です。そのような史料を論考の基礎に置くのは失当です。

 いずれにしろ。曄後漢書は、後漢時点公式史料を根拠に書かねばならないのです。当然、魏志の倭人伝記事は利用できないのです。

 楽浪郡境が、その国を去ること萬二千里と書いているのに、後漢書の冒頭で楽浪郡に触れていないのは、冒頭記事時点では、東夷倭の管轄は、楽浪郡や帯方郡でなかったことを示しています。
                                未完

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