新・私の本棚 番外 伊藤雅文 ブログ 「邪馬台国と日本書紀の界隈」 2/5
「倭人伝をざっくり読んでもやっぱり邪馬台国は熊本!?」 2021/06/25
私の見立て ★☆☆☆☆ 論旨瞑々、覚醒期待 初回2021/07/15
*取り敢えずの疑問点~つっこみ 承前
3.『三国志』後代写本の際に、氏の解釈する後漢書の「創作」に合わせて三国志が「改竄」されたというのは動機の存在しない大罪です。この「改竄」によって、利益を得るものがいないから、犯罪は発生しようがないのです。「三国志写本の際」と言っても、いつ、どこで、誰が、誰のために写本するのか、不明です。
「両者」、「抽象的な」日程と意味不明な文字を費やす意味がわかりません。
*流通写本の対処不明
明らかに、「改竄」計画は劉宋以降ですが、劉宋代の改竄計画を、誰が、後世王朝で実行したのでしょうか。その間、裴松之によって念入りに校正、補注された「三国志」裴注本は、着々と写本複製され世に広がっていたのです。
*実行不能な改竄使命
時の皇帝の蔵書である「三国志」同時代原本は、天下に一冊しかない貴重書であるから、厳重保管されていて通りがかりに改竄することなどできません。
氏は、そこから写本を起こす際に、改竄、つまり、すり替えを行ったと言うつもりらしいが、慎重に人選された関係者が分担して行う大事業に介入して史料をすり替えることなど不可能です。
*露見必至/斬首必至
よしんば、何かの曲芸で改竄写本を作成しても、官制写本の全文校閲で露見するのです。よしんば、権威者の校閲の目を逃れ、つまり、校閲に手落ちがあって、原本と明らかに異なる改竄写本が世に出ても、原本は健在であり、次回写本時には、本来の記事が世に出ます。
また、改竄写本が世に出れば、当然、当時、南北両朝各地で、「改竄」前写本と照合されるので、悪は露見するのです。
*族滅不可避の大罪
とことん遅くとも、この時点で前回写本時のすり替えが露呈し記録されている関係者一同が尋問に曝され、程なく、「犯人」が特定、処刑されるのであり、改竄写本に由来する三国志は、残らず廃棄されます。
*意味不明の大罪
総じて言うと、そのような改竄は、不可避的に是正され無意味です。中国古代国家の法と秩序を侮ってはならないのです。
*証拠提示の義務
視点を変えて、学問上の論証の常識として、な原本改竄というとびきりの異常事態が行われたと主張するなら、いつ、どのようにして発生したか論証する必要があります。それがなければ、ただの「ごみ」新説でゴミ箱直行です。せめて、当時こうすれば実現可能だったとの「おとぎ話」が必要です。
*史官の使命~史書の継承
この件で、実際に肝心なのは、史官の立場を取る関係者は、資料を漏らさず追求して、史書記事を書き上げるのが命がけの責務であり、噂話や勝手な造作で、本来の記事を書き換えることは、一切ないのです。
いずれの時代も、真摯な史官は、最善を尽くして、時に身命を賭して執務したのであり、現代人の死生観や倫理観を押しつけてはならないのです。
未完
« 新・私の本棚 番外 伊藤雅文 ブログ 「邪馬台国と日本書紀の界隈」 3/5 | トップページ | 新・私の本棚 番外 伊藤雅文 ブログ 「邪馬台国と日本書紀の界隈」 1/5 »
「倭人伝随想」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 古田史学論集 24 正木裕 改めて確認された「博多湾岸邪馬壹国」(2022.05.20)
- 新・私の本棚 番外 ブラタモリ 「日本の構造線スペシャル 〜“構造線”が日本にもたらしたものとは?〜」(2022.04.06)
- 倭人伝随想 6 倭人への道はるか 海を行かない話 7/7 改頁 唐書地理志談義(2022.03.22)
- 倭人伝随想 6 倭人への道はるか 海を行かない話 6/7 改頁 唐書地理志談義(2022.03.22)
- 倭人伝随想 6 倭人への道はるか 海を行かない話 5/7 改頁 唐書地理志談義(2022.03.22)
「新・私の本棚」カテゴリの記事
- 新・私の本棚 古田史学論集 24 正木裕 改めて確認された「博多湾岸邪馬壹国」(2022.05.20)
- 新・私の本棚 古田史学論集 25 正木裕 「邪馬台国」が行方不明になった理由(2022.04.24)
- 新・私の本棚 古田史学論集 25 谷本茂 「鴻廬寺掌客・裴世清=隋煬帝の遣使」説の妥当性について(2022.04.20)
- 新・私の本棚 古代史検証4 飛鳥の覇者 推古朝と斉明朝の時代 追記 2/2(2022.04.11)
- 新・私の本棚 古代史検証4 飛鳥の覇者 推古朝と斉明朝の時代 追記 1/2(2022.04.11)
« 新・私の本棚 番外 伊藤雅文 ブログ 「邪馬台国と日本書紀の界隈」 3/5 | トップページ | 新・私の本棚 番外 伊藤雅文 ブログ 「邪馬台国と日本書紀の界隈」 1/5 »
コメント