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2021年8月16日 (月)

新・私の本棚 高柴 昭「邪馬台国は福岡平野にあった」 7/12 臺論3

 「通説に惑わされない21の鍵」(文藝春秋企画出版)2015年4月刊 
私の見立て ★★★★☆ 総論賛成、各論疑義  2021/08/14

 謝承後漢書」では「邪馬壹国」……范曄も「邪馬臺国」と記した可能性が……あります。……斐松之が、「邪馬壹国」の部分だけは見過ごしたとは考え難いと思います。と見れば斐松之が見た「三国志」では「邪馬臺国」となっていた可能性が……浮上します。

 「謝承後漢書」に東夷列伝・倭伝を「見る」のは、根拠の無い幻想です。一方、三国志で東夷国名は些事です。裴松之が特段の関心を持ったとは思えません。論議に値しない「可能性」は、さっさと廃棄すべきです。

 ……「三国志」……原本は残っておらず、「三国志」が……刊行された……北宋……南宋となった以降にも……刊行されています。後の時代に……「邪馬壹国」と書き換えられた可能性があるのでしょうか。その場合、……意図があって書き換えられた……ように思われます。

 「何らかの意図」は、不思議です。「印刷工房」所蔵の版木を改竄しても流通刊本は手つかずで早晩露見します。正史改竄は、本当に命がけで、露見すれば(英語で言えば、仮定の問題である、IFでなく、その時どうするというWHENです)、共犯一同斬首で首が飛び、連座妻子は、首が繋がっても、奴隷、宮刑、果ては娼家に売られ「ただでは済まない」のです。誰がそんなことをするのでしょうか。

 近年、強引な説法として、「陳寿原本が、本来自説通りだったのが、後世、原本改竄されて今の刊本になった」とのホラ話がありますが、工程蔵書をどのようにして改竄するのかという疑問を置いたとしても、「どの史書のどの文字も改竄可能」とは、底なしの泥沼論です。氏が、無根拠、無法の「思い付き」株に感染していなければ幸いです。

 これからは推測になりますが、一つの可能性として考えられるのが中央公論社「歴史と人物」昭和五十年九月号に掲載された薮田嘉一郎氏の「『邪馬台国』と『邪馬壹国』」と題する一文です。……三国志の校定者が「邪馬臺」や「臺與」の「臺」という文字を似たような字画(字形)である「壹」と書き改めた可能性があると……述べておられます。

 僻諱で、似た字形の代字を選んだとは、安直な素人考えの与太話です。因みに、正史筆頭三史「後漢書」の「臺」は、なぜ見過ごされたのでしょうか。まことに不思議極まりないホラ話を信じる方も信じる方です。後世正史の「臺」も、残らず生き延びています。
 とは言え、ことの責任を薮田氏に押しつけて済む問題ではないでしょう。誰でも、何か「妄想の虫」に取り付かれる事はあったとしても、評価されれば却下です。「可能性」など無意味です。
 このように著書に書き込むには、証人審査した上で取り上げるべきです。

 ……南宋の時代に……帝の居所を意味する……「臺」の字を東夷の国名に使うことは許されないとする考え方があったとする……、薮田氏の推測は正鵠を射ているように思われます。……はじめに倭人伝の間違いは多くないとしましたが、「臺」の字だけは「壹」と書改められたと見た方が良いようです。

三国志改竄論とは「世も末」です。南宋刊本は、多数の学者が議論して校勘したのであり、版木改竄の大罪を犯すことはあり得ないのです。
 無知な方は妄想を逞しくできてうらやましい限りですが、後世東夷蛮人の推測するように、魏志の「臺」の「筆禍」で、宋代の誰かが処刑されることはないのです。「筆禍」は、あくまで当代王朝、今上帝に対する大逆罪です。

 無学、無知な現代人(東夷蛮人)の無責任な(妻子や両親の「首」のかかっていない)発言は、無視すべきです。「正鵠」は、物知らずの物言いです。
 倭人伝に誤字は希としながら、一字の誤記にこだわるのは、不合理です。

*史家の気骨
 再確認ですが、笵曄は、皇帝退位陰謀を聞かされて、不同意でも密告せず、陰謀加担と見なされ、連座した嫡子共々斬首されました。密告して免罪を避けなかったのは、士人の志を堅持したのです。笵曄は、史記「司馬遷」はもとより、漢書「班固」、三国志「陳寿」も、厚遇どころか、迫害された先例は承知していたのです。

                                未完

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