今日の躓き石 「引きこもり」を内輪から責める「社会的距離症候群」の迷妄
2021/09/26
今回の題材は、NHK定時ニュースなどで報道されている、その道の「権威」のトンデモ発言である。以下、この記事は、「権威」と「世間の人」の隔絶を歎くのである。
まずは、素人目にも、権威が、世間の人が心の中でその言葉に対して抱いている「イメージ」なるもの(やや言葉の意味が不確かだが、漠然たる「印象」のことか)を、なぜ正確に把握できたのか不思議である。権威の使命は、「引きこもり」と捉えられている人たちの心を確かめるのが、本来の道ではないのだろうか。ここでは、世間の人の誤解を調査し、病根を摘出したことになる。的外れではないだろうか。
あえていうなら、権威は、そのような堅固な見解を固めるまでに、全国調査でもしたのだろうか。何人に聞いて何人がそう答えたのだろうか。今回の発言には、そのような見解に至った根拠(データ)が示されていない。
次は、「引きこもり」と言う平易な日本語すら(権威によると)「誤解」してしまう世間の人に、長々と漢字が続く新語を提案して、正確に、つまり、権威の思っている意味と同じ意味で覚えてもらえると思っているのかという疑問である。
世間の人は、権威を基準にすると、当然、教養のほどが違うので、同じ理解ができないのではないかと懸念するのである。言葉が通じなければ、何を語っても伝わらないのではないか。誤解以前の問題である。
そう思う背景は、権威が回天の妙策と言うつもりで持ち出したのか、「ソーシャルディスタンス」なる、世に蔓延るにわか作りのカタカナ語の剽窃である。
また、「社会的距離症候群」なる解決策は、劣悪この上ないのである。以下説くように、「社会的距離」なるにわか作りの造語は、劣悪な産物であり、そうした言葉と「症候群」を繋いで、何を言いたいのか不明である。
正直言って、COVIT-19(「コロナ」は、トヨタ自動車の主力車の商標であり、病原体の愛称として口に出すのは恥ずかしい)蔓延防止ということで、一部の高名な提唱者が間違って唱えたカタカナ語「ソーシャルディスタンス」が、定説となって出回っているが、これは、ある種の「距離」を言っているだけで、そうした距離を「置きなさい」と言うメッセージは、一切こめられていないので、明らかな誤用なのだが、引っ込みがつかなくなったせいか、強引に意味をこじつけて出回っているのである。いや、これは、一部政治家や都道府県知事の浅薄なぶち上げのせいであって、権威に責めはない。
と言うことで、権威は、にわかに、「社会的距離症候群」なる熟語を持ち出して、先に挙げたはやり言葉と大変紛らわしい「ソーシャルディスタンシング」なる、正しいが、まず世間の人に理解されない言葉を持ち出している。
また、ここまで紛らわしいと、商品名だったら、商標権侵害、文学作品であれば、剽窃、パクリである。世間の人の信用を無くすことは、間違いない。用語の権利関係の確認はともかくとして、だれも、この言葉の「パブリシティ」効果について、まじめに考えなかったのだろうか。一度世間に出てしまうと、取り消せないし、訂正も効かないのである。仲間内でダメ出ししないのは、良くない習慣である。誰かが、率直に意見すべきではなかったかと思えて、まことに、勿体ないのである。
それはともかくとして、ここまでの流れでは、世間の人が、ご高説の漢字熟語を見ても、カタカナ発音を聞いても、英語を見ても、権威の思いは、何も伝わらないのである。覚えてもらえなくては、泡沫(うたかた)となるだけである。
正直なところ、「引きこもり」現象を誤解しているのは、NHKの諸番組を含めたメディア側の諸兄の短絡的理解である。家庭内にありながら、ドアに鍵をかけて、家族にすら替えを見せない、いわば、極端な事例を番組で取り上げるから、世間の人に定説となっているように、権威に誤解されるのである。いや、今回のNHKの報道は淡々としていて、当事者意識は見られないが、普通に読めば、誰が責められているのか、うっすらわかるのではないか。
それはそれとして、話題の原点に戻ると、「引きこもり」は「閉じこもり」でないことは、世間の方はご存じの筈である。
だって、昔から、「没交渉」と言うように、そうした生き方はあったのである。
例えば「引きこもりがち」とでも言えば、世間の方に、たやすく理解されると思うのである。そうした核心に向かって、若者言葉で言えば、「ガチ」勝負すべきなのである。物事の核心から目を背けて、自分独特の言語宇宙に逃げてはいけない。自己陶酔してはいけない。
どうか、権威には、自分で作った金剛石の「から」を出て、世間に出て世間の人の言葉を聞いて、その思いを察して欲しいものである。
そうしなれけば、権威の高邁な思いは俗耳に伝わらないのである。
以上
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