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2021年10月29日 (金)

新・私の本棚 棟上寅七 『槍玉その68「かくも明快な魏志倭人伝」』 2/3

木佐敬久 著 冨山房 2016年刊 「新しい歴史教科書(古代史)研究会」
「棟上寅七の古代史本批評 ブログ」2021.5.06からの転載 
 私の見立て ★★★★☆ 必読の名批評    2021/10/29

*生野氏著書引用 続き
 それに、史記によれば漢の武帝が楼船を造ったとあるが、「高さ10丈、旗幟をその上に加え、甚だ壮なり」とある。三国時代の約300年前に、すでにこれだけの造船技術を中国は持っていたのである。

 その武帝は、朝鮮征伐の際、5万もの兵を船で朝鮮半島に送りこんでいる。「楼船将軍楊僕を遣わし、斉より渤海に浮かぶ。兵5万。」 この時には山東半島から渤海を横断して朝鮮半島西海岸に着岸している。この海上ルートは、前漢時代には開かれていたことになるし、魏の明帝も楽浪・帯方を奪回した時は「密かに船を渤海に浮かべた」とある。

 以上のことを参考にするなら、魏使一行の乗った船は相当大きな船であったと思えるし、黄河河口域から博多湾まで10日で来ることができた可能性もある。現在の帆船であれば、一日の航行距離は、150~200km以上は可能である。黄河河口域から博多湾までは、約1800~2000km程度であるから、数字上は10日程での航行は可能ということになる。こと帆船に限るなら、3世紀と現在とでそれほど大きな差があったとも思えない。】』
*生野氏著書引用終わり

*コメント
 棟上氏の見解を差し置いて、史料考証からみたコメントは以下の通りです。
 生野氏著書引用が正確と仮定し、読み取れる限りの不備を指摘します。

 まず、陳寿「呉志」に「江表伝」なる列傳はなく、「呉志」に裴松之が付注した「江表伝」を誤解したものと思われます。

 Wikipedia記事を参考にすると、【『江表伝』(こうひょうでん)は、西晋虞溥編纂の呉史書である。晋室南渡の後、虞溥の子の虞勃が東晋元帝に『江表伝』を献上し、詔して秘書に蔵したという。孫呉事績を、編年体「伝」形式を念頭にしつつ、記述したものと思われる。『旧唐書』「経籍志」に「江表伝五巻、虞溥撰」とあり、五代の乱世を経た北宋期には散佚して、書物の全容は全く不明である。】(要約、補追は筆者の責に帰すものである)

 当記事は、用語から魏晋視点で書かれたと速断していますが、用語は、晋代に是正された可能性が高いとみえます。後出のように「江表伝」は魏武曹操敗北を東呉視点で「粉飾」した東呉寄り史書とみるのが順当と思われます。

 「江表伝」の散佚ですが、「三国志」、特に「呉志」の裴注に「江表伝」の独自記事が引用され、当該部分は現在も健在です。但し、陳寿が検証して採用したものではないので、「三国志」本文と同様に扱うことはできません。

*裴注「江表伝」補追の意義
 「江表伝」上梓は陳寿没後なので、陳寿は内容を知らなかったのは、明白であり、東呉史官は、「呉書」編纂時に、史官の見識で相当する史料を採用しなかったから、東呉史官が編纂し、東呉滅亡時に晋に提出された「呉書」が、「三国志」「呉志」に充当されても「江表伝」相当記事は不在だったようです。そのため、裴松之は、皇帝の嗜好に応じて「江表伝」から他の史書にない東呉寄りの視点の記事を補追したようです。

 なお、世に言う裴注の評価は割り引く必要があります。要するに、裴注は、大半が蛇足で、三国志本文の充実には寄与していないと思われます。

                                未完

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